第323話 壁
「くっ……」
突如として現れた青い炎に阻まれ、康生の攻撃が防がれる。
リングの端にのみのびていると思われていた青い炎だったが、康生が攻撃しようとするとそれを阻むようにも出来ているらしい。
「何をしても無駄。この炎はどんなものでも燃やしつくす。だからあなたにもう逃げ場はない」
シロはまっすぐ康生を見ながらも青い炎を出し続ける。
よく見ると、先ほど康生が飛ばした針は、黒い炭になっているのが分かった。
わずか一瞬触れただけでここまでなるということは、あの青い炎は相当なものだということが分かる。
「じゃあ……」
咄嗟に何か思いついた康生は、両手をシロに向けて構える。
「いけっ!」
そう康生が叫ぶと、康生の両手からは水の塊が飛び出してくる。
火には水。よくある弱点で対抗しようとしたということだ。
しかし、
「そんなものでは私の炎は止められない」
驚いたことに、青い炎に近づいた水の塊が一瞬のうちに蒸発してしまったのだった。
「なっ!?」
その光景に呆然としながら康生はさらに焦燥感にかられる。
後ろを振り返れば、すでに青い炎はリングの約半分を覆っていた。
恐らくこのままだと何もせずに康生が焼け死んでしまう。
そう直感した康生はとにかく頭を回転させる。
「何か手は、何か手は……」
ひたすら頭を回転させながら、あの青い炎に対抗する手段を考える。
「もう諦めて」
何もすることが出来ないと悟っているシロは、康生に向けて無表情の顔を向ける。
「いや!まだだっ!」
そう叫ぶと同時に、康生は懐から針のようなものを複数取り出す。
するとその針のような物をリング中にばらまく。
当然ばらまかれた場所は、青い炎に浸食されていない場所だ。
「何を……?」
突然の康生の行動に若干の警戒をしつつも、シロはさらに青い炎の威力をあげる。
「これならっ!」
そう叫んで康生は精神を集中させる。
その瞬間、リング中にばらまかれた針がそれぞれ反応する。
するとリング針の近くの床がだんだんと盛り上がっていく。
「これは……?」
盛り上がっていく様子を見ながらもシロは声を漏らす。
「防げないのならばそれまでだ!逆に利用させてもらうぞ!土の壁では炎は燃やすことは出来ないだろ!」
そう言うとリングの床はみるみるあがっていき、やがてシロを囲うように盛り上がっていく。
どうやらその土の壁にシロを閉じこめようということのようだ。
それならば、青い炎は土の壁を伝っていき、やがてシロ自身を苦しめることになると康生は思ったのだろう。
しかし、
「でも、この程度じゃ甘い」
シロがふっ、と手を振ると盛り上がっていた土の壁がみるみるうちに崩れていったのだった。
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