第322話 青い炎

「その力、少し厄介……」

 煙が晴れ、康生が距離をとったのを確認したシロは両手掲げてさらなる魔法を準備する。

(あれは一体なんなんだ……)

 明らかに普通の炎と違った魔法を見て康生は距離をとりつつ、次の行動を考える。

 速攻でシロを倒そうと考えていた康生だったが、未知の魔法が出てきたことにより少しだけためらうようになった。

 明らかに普通の炎とは違う、青色のそれは、恐らく威力も普通のより高いのだろうと察知した。

 だからこそ、その攻撃に当たらないように気をつけながら攻めようとしたのだが、

「これならどう?」

 まるでこの攻撃を回避してみろとあざ笑うように、シロが掲げて両手に青色の炎を出現させる。

 そして次の瞬間、両手を左右に向けたと思えば、青い炎は一直線にリングの端に向かって飛んでいった。

「なんだ……?」

 しかしその青い炎が向く先は康生ではなく、ただ何もない場所だった。

 一体何をしようとしているのか、康生は不可解に思いながらも慎重に敵の動きを監視する。

「――これで終わり」

「なっ!?」

 そうシロが口にした瞬間、康生はようやく敵の攻撃の正体に気づく。

 シロはただ一方方向に青い炎を飛ばしていたのではなかったのだ。

 よく見れば、リングの端に向かっていた青い炎はやがてリングを囲うように覆っていく。

 まるでリング全体を燃やさんとするばかりにものすごい勢いで青い炎はをリングを覆っていく。

 しかしシロの攻撃はそれだけではなかった、リングをの隅を走る炎だったが、やがてその青い炎はリングを囲い終えると、徐々にリングの中心へと足を進めるのだった。

「くそっ!」

 現在シロはリングの中央にいる。

 それが意味することは、康生は嫌でも頭の中で想像できた。

 つまりリングを囲っている青い炎はやがてシロへと向かって収縮していくということだ。

 青い炎の威力が分かっていない以上、康生はこの事態を用意に見過ごせるわけではなかった。

「だったらっ!」

 青い炎に燃え尽かされる前にと、康生は勢いよくシロに向かって飛び込む。

 青い炎はリングの端から迫ってきている。

 だからその元凶のシロを倒してしまえば、それが収まると思ったのだろう。

「食らえっ!」

 康生は瞬時に懐からペンを取り出す。

 以前までは、ただ針を飛ばすだけのペンだったが、魔道具改造を施したおかげで威力は何十倍にもあがり、さらには魔法の付与まで出来るようになっていた。

「いけっ!」

 一瞬の狂いなしに、的確にシロに向けて飛ばした。当然その攻撃には麻痺に毒、さらには水魔法を加え一瞬で意識を失うほどの痺れがくるようにしている。

 だが次の瞬間、

「くっ……」

 その攻撃はシロの手からのびた青い炎によっと止められたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る