第310話 英気
「では行くぞ康生!」
「はいっ!」
現在はリリスの城にある訓練所。
そこでは毎日恒例となったリリスによる康生の魔法訓練が行われていた。
内容は至ってシンプルなもので、リリスが鞭を操り、四方八方から三重にも四重にもなる複数の鞭で攻撃を繰り出す。
それを康生が一度に複数、さらには全て属性が違う魔法を放ってそれを迎撃するものだ。
当然鞭の威力はリリスが手加減をしているわけではないので、放つ魔法は出来るだけ強くなければならない。
「はっ!」
しかしもう慣れたものなのか、康生は一切休むことなく、ただひたすらに攻撃を退けていく。
「ではこれはどうじゃっ!」
全ての鞭がはじかれたことで、リリスは強力な攻撃を放つべく魔力をこめる。
するとリリスの姿はニ体へと増えてしまう。
それはリリスだけが使える固有魔法、分身だ。
それを使って先ほども鞭を複数に増やしていたのだ。
「ふぅ……」
しかしリリスが複数に増えても康生は動じることなく、ただひたすらに集中力を高める。
これもリリスに教わったことだが、魔法を放つ際には自身の集中力によって威力もまた変わってくるということだった。
なので康生はリリスの攻撃に動じることなく、心を落ち着かせながら魔力を練る。
「いけっ!」
そんな落ち着いた状況の中、康生はニ体のリリスがつっこんでくると同時に雷で生成した槍を飛ばす。
「ぐっ!」
その雷の槍は狙い違わず、ニ体のリリスの胴体を同時に突き抜ける。
胴体に大きな穴があいてしまったリリス達はそのまま地面へと倒れてしまう。
「甘いっ!」
しかしそこで安心したところを見計らってリリスは背後から康生に攻撃を仕掛ける。
だが、
「分かってますよ!」
ただちに拳を構えた康生は背後から来るリリスに向かって拳を向ける。
当然その拳には炎がまとってあり、少しでもふれれば火傷では済まないような火力だった。
「くっ……!」
どうやらリリスもこれは勝ち目がないと感じたのか、つっこむ手前で動きを止めた。
「ふぅ……」
リリスが動きを止めた、つまり負けを認めたということで康生は安心するように拳を下げて炎を解除する。
「毎日しているせいか、連続して魔力を消費してもまだ大分動けるようになりましたよ」
と訓練が終わった康生はそんなことを呟いた。
「まぁあれほどの魔法を毎朝使っておればそうなる」
そう答えるリリスも疲れた様子は見せずに立ち上がる。
「さて、明日は大会当日じゃ。くれぐれも負けることのないようにな」
「えぇ、もちろん分かってますよ!」
そうして康生は明日の武道大会に向けその日一日は、英気を養ったのだった。
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