第308話 特訓

「武道大会?」

 リリスの口から出た言葉に、康生は思わず聞き返す。

「そうじゃ。詳しく話せば長くなるが、少しだけ聞いてくれ」

「分かりました……」

 それから康生は、武道大会についての話を聞いた。

 それと同時に、どうして今回のように回りくどいやり方で竜と戦わせたのかも一緒に分かることとなった。


「まず、康生の存在が他の国に知れた。かなり強い奴がきたとな。それで各国は一様康生について調べようと動いた」

 その話は確かにメルンが言っていた話なので本当のことなのだろう。

「じゃが当然情報がでるわけでもなく、各国は痺れを切らして康生との試合を設けるように話をしてきた」

「試合を?」

「そうじゃ。試合をすればどれだけの驚異か分かると思ったのじゃろう」

 リリスのその話を聞いて、つまり武道大会とは各国から集まった異世界人と戦うようなものだということのようだ。

 それをリリスの国で行うそうだ。

「でもあの力を使ってしまえば、康生さんが圧勝するのは目に見えていますね」

 と横で話を聞いてメルンが呟く。

「そうじゃな。じゃが康生、『解放』の力は本当に必要な時以外は決して使うなよ?出来れば各国の前でその力を見せるのは避けたい」

「分かりました……」

 リリスには色んな考えがあるだろうが、康生自身もあまり多用してはいけないと思っているのでそこの考えは合致していた。

「そこでじゃ。今回こうして康生の力を見させてもらった理由としては、大々的にやれば必ず我の部下達が見に来る。そうなった場合、敵国に情報を流されてしまっては困るからの。じゃから今回はこんな形をとらせてもらったわけじゃ」

「そういう理由で……」

 メルンからこの国には、リリスの失脚を狙った裏切り者がいるかもしれないということを聞いていたので、話はすんなりと入ってきた。

 これで今回、こんな形で竜と戦うことになったことについても納得出来た。

 ただ、

「もし『解放』の力を使わないとなれば、今回の戦いは少し厳しくなりそうですよ?竜相手にも結局『解放』の力を使わないと勝てなかったんですから」

 と康生は各国から来る強者達のことを考えながら弱音を吐く。

「まぁ確かにあの状態のままでは少し厳しいかもしれんの」

「確かに『解放』の力がなければ駄目かもしれませんね……」

 康生の意見を聞き、リリスとメルンはそれぞれ答える。

「じゃから明日からは、魔法の特訓を始める」

「魔法の特訓ですか?」

「そうじゃ。今までは他の者の目を気にしながら、早く『解放』の力を完成させるためにしてきた。その分、少し仕事がおろそかになってしまったが、もうそれも片づいた。じゃから明日からはまたいつものように訓練をつけてやることができる」

 ということで、康生は明日から武道大会へ向けての特訓が始まるのだった。

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