第307話 武道大会
「ここは?」
テレポートの光に包まれしばらく待つと、康生は見知らぬ部屋に立っていた。
部屋の中は大きなベッドがあり、壁際には棚が敷き詰められているだけで、あとは小さな机があるだけの質素な部屋だった。
そう思いながもじろじろと部屋を観察していると、リリスが少し顔を膨らませながら椅子を持ってくる。
「あまり人の部屋をじろじろ見るものではないぞ」
「えっ?ていうことはここってリリスの部屋?」
「そ、そうじゃ……」
少しだけ恥ずかしがるように顔をうつむかせながらリリスは答える。
「もう、上王様の部屋は相変わらず何もないですね〜。これだと殿方にあまり好かれないですよ〜?」
と康生の横に、慣れたように椅子を持ってきたメルンが答える。
「そう言われてもな……。この部屋には寝る時しか使わんから、あまり飾ったりはしないんじゃよ」
リリスはそういって、自分の椅子に腰かける。
机を囲むように座ると、メルンが奥から飲み物を運んでくる。
「でもそうなのか?男というのはもう少し可愛い部屋の方がいいのかの?」
飲み物が配られている中、先ほどのメルンの発言を気にしてかリリスは相変わらず顔をうつむかせながら尋ねてくる。
「い、いや俺は別にそういうのはあまり気にならないというか……」
なんともいえない妙な空気になるのを肌で感じつつ、あまり恋愛経験のない康生はひたすらに縮こもる。
「ほらほら、二人とも何してるんですか。とりあえずまずは飲みましょう?康生さんも先ほどの戦いで疲れたでしょうから」
とそんな空気を察してか知らず、メルンが二人にカップを手渡してくる。
「あ、ありがとう」
「まぁそうじゃな」
そうして康生たちはそれぞれカップを口に含み落ち着く。
カップの中は紅茶のようなもので、康生の心と体を癒してくれるようだった。
確かにここに来るまでに体力を大きく使ってしまった康生にとって、この休息は十分に意味のあるものだった。
「それで詳しく教えてもらえるんですか?」
それぞれがカップを机においたタイミングを見計らって康生はすかさず質問する。
「そうじゃな……まずはどこから話せばいいのか……」
とリリスは悩むように頭を傾げる。
それを見ながらも康生は何が起こったのか気が気でない状態で待っていた。
「まずは……そうじゃな。一番近くにあるものから話していこうか」
「一番近く?」
何か大変なことでも起こるのか?康生はそんな想像を膨らませながらリリスの言葉を待つ。
「康生。お主には、来週。この国で行われる武道大会に出てもらいたい」
「武道大会?」
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