第306話 光
「ごめんなさい康生さん!」
康生が振り返ると、メルンが頭を下げて申し訳なさそうな声をあげていた。
「え?」
その行動の意味が理解できず、康生はしばらく困惑する。
どう言葉をかけようか悩んでいる中、康生の背後で声が響く。
「よくやったぞ、康生」
聞き覚えがある声が聞こえ、康生は咄嗟に振り返る。
するとそこには――
「流石、我が鍛えただけはあるの」
倒れている竜の前に立っていた、リリスの姿があった。
「……リリス?ど、どうしてここに?」
急なことに、状況も何もかも把握出来ていない康生はただ混乱するように口を開く。
「すいません。実はこの戦いは上王様の計画だったんです……」
そんな混乱している康生の横へ移動したメルンは、短く端的にことの次第を説明する。
「……計画?戦いが?」
しかしそんなことを言われても、当然すぐに理解出来るわけもなく、ただただ困惑するだけだった。
「何、簡単なことじゃ」
すると、そんな康生を見たリリスはゆっくりと康生に近づきながらことの顛末を説明する。
「我が康生の実力を知るために、この場所へ連れてくるようにメルンに協力を頼んだ。そうしてここに来た康生に我が知っている中で一番の強さを誇る竜と戦わせて康生の実力をみようと思ったんじゃ」
「俺の実力を……?」
リリスが説明してくれたことで、康生はようやく事情を把握することが出来た。
それと同時に混乱する頭が晴れることになるが、すぐにやり方が遠回しなことに気づく。
「……実力をみるだけだったら、もっと直接的にやればよかったんじゃないか?こんなことをしなくても、ドラゴンと戦うことも出来たはずだ」
そう、わざわざ秘密通路を移動させて、いくつもの罠を越えることをさせてまでこのドラゴンと戦う意味はあったのかと康生は疑問に思ったのだ。
「まぁ、確かにこのドラゴンと戦わせるためだけじゃったら、こんな遠回りなことはさせなかった」
「だったら……」
どうして?と康生は尋ねようとする。
しかしそれよりも先にリリスが口を開く。
「こういう形でしか出来なかったんじゃよ」
「……?」
こういう形でしか出来ないと言われ、康生はただただ疑問を浮かべる。
事情も何も知らない康生は、ただただリリスからの説明を待つだけだった。
「上王様?その辺の詳しい事情は長くなりますから、別の場所で説明した方がいいんじゃないですか?」
「おぉ。確かにそうじゃな。じゃあ康生、少しだけついてきてくれ」
そう言われ、康生はリリスとメルンと共にテレポートの光にのまれたのだった。
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