第305話 扉
「…………?」
竜が地面へと転落する一部始終を見ていたメルンだったが、現実に何が起こったのか頭で理解出来ずただただ混乱したような表情を浮かべていた。
メルンは、高速の動きでも視認することが出来る魔道具をつけているにも関わらず、ただただ呆然と竜が地面へと落ちていくことしか理解出来ずにいた。
「これでどうだ?」
竜が地面へと落下していったのを見守っていた康生だったが、そのまま何も動きがないことを確認した後、ゆっくりと近づいていく。
「――よし」
竜に近づくも当然、竜は反応を示すことはなかった。
そしてゆっくりと竜の体を触っていき、本当に何も反応を示さないことを確認した康生は安心すとともに一息つくのだった。
「大丈夫だったメルン?」
竜を倒したことを確認した康生は、すぐにメルンの安否を確認しようと近づく。
しかしメルンはじっと立っているだけで、何も反応を示すことはなかった。
「メルン?」
その態度に疑問を抱いた康生は、首を傾げながら手を振ってメルンの反応を確かめる。
「……す、すいません、少しぼーっとしていました」
そこでようやくメルンが口を動かす。
「もしかしてどこかけがでもしちゃった?」
「いえ、けがはなんともないですが……」
とそこで言葉を区切ったメルンは、視線を康生と竜、交互に向けながらもゆっくりと口を開く。
「――今のが『解放』の本当の力なんですか?」
「本当の力、とはまではいかないけど、大体完成しているかな」
「……あれでまだ完成ではないんですか」
『解放』の力がまだ完成していないという事実を聞いたメルンは少しだけ恐怖を感じるように身を縮こまらせた。
完全に動きをみることが出来ず、そしてまさに一瞬のうちに、竜の中でも特別に力が強い種族を倒してしまった。
メルンはここで改めて康生の力の強大さを実感するのだった。
「それよりも竜を倒したから、もうリリスの部屋に行くことが出来るんだよね?」
「え、えぇ……」
リリスの部屋を守る為の竜を倒したことにより、これで康生達はリリスの部屋へと行くことが出来るようになった。
そのことに康生は喜びながら、すぐに向かおうと足を進めるが、
「あれ、でも扉はどこにあるの?」
リリスの部屋へと足を進めようとした康生だったが、この広い部屋のどこにも入り口らしき扉が存在しないことに疑問を浮かべる。
一体どういうことかとメルンに確認をとろうとすると、メルンは康生の背後で頭を下げていた。
「ごめんなさい康生さん!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます