第304話 地面
「どうだ……?」
特大の魔法を放った康生は、竜の悲鳴を聞きながら様子を伺う。
あれだけの魔法を放ったのだから、傷だけではなくそのまま倒してしまいたいと思っているが……。
「ぐがぎゃぁ!!」
が、煙が晴れると同時に今までで一番大きな叫び声を轟かせた。
「くそっ、まだかっ」
今の攻撃で竜を倒せなかったことを悔やみながらも、康生は次の作戦のため地上へと降りる。
「ぐるるるるる……」
そしてどうやら竜も康生の存在を警戒しているようで、地上へ足をつけた康生を見てじっと立ち止まっている。
「こうなったら『解放』を使うしかないか……」
「ようやく『解放』を使うんですね!」
全力の魔法でさえも倒せなかった竜相手に、康生はとうとう『解放』の力を使うことを決める。
「それにしてもどうして今まで使わなかったんですか?」
そのことに対し、メルンは素朴な疑問をぶつけた。
「いや。ちょっとあの力なしでどれだけ戦えるか知りたくて。それにあれを一度使うと魔力、魔道具共に損傷が激しいから……」
「なるほど、そういう理由で……」
今まで『解放』の力を使わなかった理由を聞き、メルンは納得したようにうなずく。
本来ならは初っぱなから使ってもよかったその力だったが、『解放』の力以外の力でどれだけ戦えるのか試したかったのだ。
そして同時に、康生はこれから先にまだ何か待ち受けているのではないかと警戒していたところもある。
魔力も魔道具も損傷が激しい『解放』の力を一度使えば、現状、2度目を使うのは難しいと考えたからだ。
「じゃあ行くぞっ」
未だに、康生を警戒して攻撃を仕掛けてこない竜相手に、康生はいよいよその力を発揮する。
「『解放』っ!」
康生がそう叫ぶと、そこから先のことは一瞬のことだった。
まず康生の姿がその場から消えた。
姿を隠した、というわけでもなく、ただ純粋にその場から姿を消した。
今この場に康生の姿を視認出来るものは誰一人といなかった。
そして康生が消えたことにより、次の攻撃を警戒して動こうとしていた竜だったが、康生が消えると同時にその動きを止める。
何が起こったのか、当然その時の竜は何も分からなかったのだろう。
ただ時間が止まったかのように、竜の動きが泊まり、そして再び時間が進むと同時に竜の体は真っ逆さまに転落していく。
まさに時を止めて動いているかのような早業にもはや竜すらも対応できるはずもなかった。
そうして次に康生が姿を現した時には、竜の体は地面に叩きつけられて、意識を失っていたのだ。
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