第303話 傷
「ぐっ!」
飛んでくる火の玉を瞬時に避ける康生。
しかしその隙を狙って、竜の尻尾が康生を襲う。
今までとは明らかに速いそのスピードに康生は咄嗟に反応することが出来なかった。
だがそれでも、すぐさま防御の姿勢をとり攻撃を防ぐ。
それと同時に吹き飛ばされる衝撃を抑えながら背後へと下がる。
「くそっ。結構速い……」
怒るだけでここまでのスピードが出ると思ってなかった康生は少しだけ焦りを見せた。
「康生さん!早く『解放』を使ってください!でないと死んでしまいますよ!」
未だに『解放』を使って戦わない康生を見たメルンは咄嗟に叫ぶ。
だが康生は『解放』を使う素振りを見せぬまま竜につっこんでいく。
「まだ『解放』は使いたくありません。ちょうど魔法の訓練をしたかったところなので、それで戦って見ます!」
「こんな時に訓練ですか……?」
康生の言葉に半ば呆れ顔を見せるメルンだったが、これ以上はもう何も言うことは聞かないと察し、何も言わずに見守ることになった。
「さぁ!行くぞっ!」
竜が空中に浮かんでいるので、康生も同じように空を飛んで竜に近づく。
「はっ!」
近づく瞬間に、右手で炎、左手で雷を生み出して同時に攻撃する。
リリスの特訓のおかげが、今まで以上の威力のある魔法が竜を襲う。
「ぐぁっ!」
だがそれでも竜にはわずかのダメージしか入らなかったようで、竜はすぐに康生めがけて反撃を加えようとする。
「まだまだっ!」
しかしそれよりも先に康生は体勢を立て直すと共に巨大な雷の槍を生成させる。
「これでも食らえっ!」
そんな巨大な槍を竜めがけて飛ばす。
「ぐがゃぁっ!」
すると今度はしっかりとダメージが入ったようで、宙に浮かびながら竜がよろける。
しかしそんな攻撃でも、竜の体には傷はついておらず有効打に欠けるようだった。
「これでも駄目かっ……」
改めて竜の皮膚の硬さに驚きながらも康生はすぐに次の作戦へと移る。
「あんまり魔力は使いたくないんだけど……」
後々のことを考えると、康生にとって恐らくこれが最後の魔法のようだった。
「くらえっ!」
そう叫ぶと、康生の頭上に先ほどの雷の槍が出現する。
先ほどと変化したのは、槍の中に入っているものだった。
小さくて、細かな石が詰まっていた。
恐らくそれで竜の皮膚を削ろうと考えたのだろう。
「はっ!!」
竜がまだ苦しがっている隙を見て康生はその槍を放つ。
雷ということもあり、その槍の速度は速く、そして鋭かった。
「ぐぎぁゃっ!!」
「よしっ!」
すると細かな石が入っていたのがよかったのか、竜の皮膚にいくつかの傷が入るのを康生を目撃した。
「すごい……」
そしてその背後では、竜に傷がつくのを目撃したメルンが小さく呟いていた。
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