第300話 強固
「ここが最後の部屋……」
通路を抜けると確かに、メルンの言ったように広い部屋が現れた。
ドーム状の部屋は、質素な作りをしており一面コンクリートでできているようだった。
「それでここがどうして最難関なんだ?」
部屋に入るも罠が発動する気配もなく、また何があるわけでもないただの部屋だ。
メルンに最難関の場所と言われて気構えていた康生だったが、本当に何もないただの部屋なので疑問に思ったのだろう。
「いえ、そろそろきますよ」
そうメルンが忠告すると同時に部屋の中央の床がいきなり光始めた。
「こ、これはっ?」
どこか見覚えのあるまばゆい光に目をくらませながら目を押さえる。
そして同時にすぐに思い出す。その光をどこで見たのかを。
「――これがこの秘密通路の最難関ポイント。竜の守り神です」
メルンが説明すると同時に、先ほどは何もいなかった中央の床に竜がただずんでいるのを目撃したのだった。
そう。先ほどの光は、康生も一度体験したテレポートを行う際に発生する光だったのだ。
つまりメルンの言うことを要約すると、リリスの部屋に行くにはこの竜を倒さなければならないということだった。
「残念ながら私は戦闘能力はからっきしなので、康生さんに頼らせていただきますよ?」
今までの罠の回避能力は全て魔道具の仕業ということを知ったので、メルンは本当に戦闘能力はないのだろう。
だからこそ、ここは康生の出番だった。
「分かりました、これもリリスの為です。頑張ります!」
そう言って康生はすぐに戦闘態勢に切り替えた。
「ちなみに補足しておきますけど、その竜は竜の種族の中で一番の強さを誇る種族です!康生さんは一度竜を倒したと聞きましたけど、あれと同じとみると痛い目に遭いますよ!」
「了解!」
最後に竜の情報をもらった康生は、それを合図に竜の懐へとつっこむ。
まだ『解放』の力は使用してはいないが、それでも魔道具や風の力を使用しているので速さは人のそれを越えるものだ。
「いっけぇ!」
まずは一発。康生は竜の腹に思いっきり拳をぶつける。
これはリリスの護衛に放ったものとは違い、本気のパンチだ。
普通ならば、内側の臓器すらも破壊してしまうそんな攻撃なのだが、
「ぐぅぉわ!」
竜が叫び声をあげると共に、自らのしっぽで康生を攻撃する。
それは康生が攻撃を仕掛けた後のことなので、つまり竜にそれほどダメージが入っていないということだ。
「くそっ、硬いな!」
すぐに尻尾の攻撃に気づいた康生は、攻撃が決まらなかったことへの悔しさと共に後ろに飛んで回避する。
「康生さん!その竜は強さは勿論、皮膚が強固にできています!それこそがこの竜最大の武器なので気をつけてください!」
と今更ながらにメルンが背後で声をあげるのだった。
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