第296話 ワクワク
「準備はいいですか?」
「勿論」
時刻は深夜。
自室にリリスがいることを確認した康生達は、いよいよリリスの部屋に侵入すべき準備を整えた。
細心の注意を払いながらも、メルンと共に綿密な計画を立てた康生。
しかしそれでもなお、失敗する確率の方が多いとなる結果だった。
今回の作戦はリリスにバレるだけならば、多少はいいかもしれない――そもそもリリスと話すのだからバレるのが前提だ。
だが、リリスの以外の者にバレてしまえば、その話が広がっていき、リリスを苦しめることになってしまうかもしれない。
だからこそ絶対に失敗は許されない作戦だった。
「最後に確認しますけど、どうしても行くんですよね?」
と、最終確認ということでメルンが康生に作戦の実行について尋ねる。
実際、康生の中では少しだけためらっている部分があることは否定できない。
でも、ここまで面倒を見てもらったリリスに対して何か恩返したいという気持ちもあり、何より困っているなら助けたいという康生のお節介もあり、そんな些細な不安は消えていった。
「当然だよ」
「分かりました」
メルンも康生の覚悟が伝わったのか、これ以上何も言うことはなかった。
「つきましたよ」
メルンに案内されてたどり着いた部屋は、リリスの自室とは正反対にある部屋だった。
「ここは?」
「ここは倉庫のようなところですね」
倉庫、というだけあって、確かにこの部屋には少し埃を被った物が沢山置いてあった。
しかし一体どうやってここから行くのか、康生はただただ疑問を浮かべる。
「確かここに――」
そう思っていると、メルンが倉庫の中を進んでいき、ある場所で立ち止まったかと思うとなにやら壁を触りだした。
「一体何を……」
そう聞いたところで、突然メルンが触る壁が光出した。
「……それは?」
「ふふふっ。これは私の特製の魔道具です!実は上王様に頼まれて、この城内には沢山の秘密通路が隠されているんです!」
「秘密通路……」
こんな時だというのに、康生は秘密通路という言葉を聞いて少しだけわくわくしてしまう。
その気持ちを押さえ込みながら、壁の向こうに現れた秘密通路にメルンと共に入る。
「こういう場所ってなんだかワクワクしますね!」
しかし、メルンも康生と同じようなことを思っていたと聞き、思わずばからしくなって笑ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます