第295話 侵入作戦

「一体どうしたんだよ……」

 メルンの話しを聞いて、いても立ってもいられなくなった康生は再びリリスに会いに行こうとしたが、結局先ほどと同じように追い返されてしまった。

「康生さんって頭はいいのに、たまに何も考えずに行動しますね」

 そんな康生の隣にそっと座るメルン。

 先ほどの無計画の行動に少しだけ呆れたようだった。

「ごめん……。俺のせいでリリスに迷惑をかけてると思うと、いても立ってもいられなくて……」

 感情的になると、思考することなく突き進んでしまう自分を反省する。

 しかしそれでも康生の思いは変わらない。

「どうにかしてリリスに会えないかな?」

「う〜ん。そうですね〜……」

 康生はここに来てまだ日が浅い。

 だからどうにしかしてリリスに部屋に侵入しようとも、どういう間取りなのか完璧に把握しきっていない。

 その点、メルンはこの城に詳しいようだし、一度康生の部屋にも侵入した実績がある。

 だからこそと思って康生は尋ねたが、メルンは閉じた目をしばらくあけることはなかった。

「そんなに難しいのか?」

「当然ですよ」

 頑張って考えてくれている中、中々考えがまとなっていないようなので、たまらず康生が質問する。

「まず、さっき言ったように、上王様は身内にすら狙われている状態です。ですから、自身の部屋には身近な者ですら容易に入れないようなセキュリティーがされているんです」

「セキュリティー……」

 確かに自室、特に寝ている時などは自身の身を狙われるのには絶好なポイントだ。

 だからこそのセキュリティというわけだ。

「じゃあどうしても侵入することは出来ないのか?」

 リリスに会うにはもう、正攻法だと駄目だと悟った康生は強行突破を画策していた。

 だがメルンの言う通りであれば、それすらも難しいようだった。

「いえ、出来なくないことはないはずです。でも相当のリスクがありますよ?」

「リスク?」

「今の康生さんは上王様が連れてきた異世界人となっています。当然素性は全くの不明にしていますから、当然他の者達からすれば怪しさ倍増です。そんな中、上王様の部屋に侵入しようとしていたとバレてしまったら、それこそ上王様が失脚するきっかけになってしまうかもしれせん」

 確かに。とメルンの説明を聞いた康生は考える。

 リリスにだけバレるならまだいい、だがその最中にリリス以外にバレてしまえば、それこそさらにリリスに迷惑をかけてしまうことになる。

 果たしてそこまでのリスクを背負って侵入することが出来るのか。

「――行こう。もし俺の知らないところでリリスに迷惑をかけてるなら俺も手伝いたい」

 これ以上迷惑をかけられない、そして地下都市を旅立つ前、こっそりとリナさんにリリスを頼むよう言われていたこともあり、康生のやる気は十分だった。

「分かりました。では、私も協力しますよ!」

 そうしてメルンと康生による、リリスの部屋侵入作戦が始動したのだった。

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