第289話 大浴場
「修行の様子はどうですか〜?」
訓練所に遊びにきたメルンが休憩している康生に尋ねる。
「ま、まぁまぁかな……」
息も絶え絶えになりがならも、康生はなんとか答える。
「全くまだ訓練を初めて三日しか経っておらんのに、情けないぞ」
とそんな様子の康生を見てリリスは呆れるようにため息をはいた。
今、リリスが言ったように、『解放』の力を完成させるため、康生はリリスの指導の元、魔法放出の訓練をすることになった。
訓練を始めて三日経つが、体力に自信のある康生はすでに死にそうな様子になっていた。
「まぁ、しょうがないですよ。こうみえても、魔力を使うようになったのはつい最近なんですから。まだ体も馴染んでないんですよ」
手厳しいリリスとは違い、メルンは康生を労るようにフォローを入れる。
「ふんっ。そんなことを言っている人はないことぐらい分かるじゃろうが。今は一日でも早く『解放』を完成させねばならんのじゃ。本来ならば、一日中訓練をさせたいのじゃが……」
と中々に熱血なリリスだが、そんな訓練になっていないのに理由がある。
「しょうがないじゃないですか。『解放』を完成させるのと同時に、康生の魔道具も完成させないといけないんですから。毎日、訓練して魔道具も作って、康生さんは心身共に疲れてるんですよ」
メルンの言う通り、康生は訓練と同時に進行で、自身の装備である魔道具の開発にも携わってた。
つまり康生のここでの日程は、午前中の間に魔道具の開発をし、午後に訓練をするというハードなスケジュールをこなしていた。
リリスも、一日中訓練をすれば康生の魔力が尽きてしまうことを分かっているからこそ、半日だけで済ましている所もある。
そういうわけで、今の康生はハードな毎日を過ごし、心身共に疲労しきっていた。
「だ、大丈夫ですよ。魔力解放も少しは使い慣れてきたし、リリスのおかげで魔力量も増えたから」
少し休憩したからか、康生の調子はいつものように戻っていた。
毎日のハードなスケジュールに耐えれるのは、ひとえに引き籠もっていた間のトレーニング生活のおかげかもしれない。
「ふんっ。何が使い慣れたじゃ。我からみれば康生はまだまだよ」
「ほんとに上王様は手厳しいんだから」
メルンが同情してくるように康生を見るが、むしろ康生はリリスの手厳しさに感謝しているぐらいだ。
何故なら康生は一刻も早く強くならなければいけないからだ。
そう思っているからこそ、このハードなスケジュールに耐えていけるかもしれない。
「まぁ確かに康生も疲れているじゃろう。ならば、今日は特別に大浴場を解放してやろうか」
「おっ、いいですね上王様!」
「大浴場?」
康生を気遣ってか、リリスは唐突に大浴場に入るように言ってきたのだった。
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