第288話 報告

「お主、このままそれを使い続けると、いずれ肉体が滅んでしまうぞ?」

「――え?」

 肉体が滅ぶと言われ、康生は思わず声を出してしまう。

「確かにそうですね〜。昨晩体を調べた時にも、体内の魔力回路が傷ついていましたからね〜」

 続けてメルンにも同じようなことを言われてしまい、康生は『解放』という力の恐ろしさを改めて知る。

「この技が完成したら、大丈夫なんですか?」

「あぁ。大丈夫じゃ。その技の元となっている魔法は、元々我が得意とする魔力放出なんじゃ」

 説明すると同時にリリスは手のひらを康生に向けると、そこから魔力放出を行う。

 すると康生の体が見えない力に押されるような感覚に襲われる。

「これが魔力放出。康生はこの魔法を元に高速移動を可能にしているのじゃろう。もっともその装備も関係しているようじゃが」

「ま、まぁ……」

 どうやらリリスは一度見ただけで、『解放』の力を全て見切ってしまったようだ。

 そのことに若干驚きつつも、リリスの話に耳を傾ける。

「そこで、我は康生の魔力放出を完璧にさせる。装備の件はメルンに任せるがの」

「はい!任せてください!康生さんの装備は魔道具と人の技術が合わさった新たなものですから!研究者としてこれほど携われて光栄なことはないですよ!」

 テンションをあげたメルンは可愛らしくその場でぴょんぴょんとはねた。

 そんな様子にため息をこぼしながリリスは康生に向き直る。

「よし。それじゃあ特訓を開始するぞ」

「はい!お願いします!」

 そうして康生は魔力解放をマスターするための訓練を始めることになった。




「隊長、報告が」

 康生達がいる場所から変わり、ここは地下都市の最深部にあたる場所。上代琉生率いる特殊部隊の拠点となっている場所だ。

 そこで報告を待ってた上代琉生に元に、部下の一人が音もなくやってくる。

「待ってたぞ。それで敵の動きはどうなってる?」

「はっ。敵は現在戦力を中央に集めている模様。さらに情報では魔力を開花させる人体実験が活発に行われているようです」

「そうか」

 報告を聞いた上代琉生は、安堵のため息をこぼす。

 いくら敵がしばらく動きがないだろうと予想はついていても、実際の動きを確認しないとなんともいえないからだ。

 しかしこちらの予想通りということもあり、上代琉生は少しだけ安心していた。

「さらに情報なのですが、各地で我々と同じく反乱の意志を集めている集団がいると報告が」

「やはりいたか」

 敵の戦力が増えている中で、こちらの戦力もさらに増えそうだと思った上代琉生は表情には出さずに喜ぶ。

「それで、これは確かな情報ではないのですが……」

 と最後に付け加えるように、部下の一人が上代琉生に報告を加える。

「――――本当か?」

 報告を聞いた瞬間、めったに表情を崩さない上代琉生の表情が驚愕の表情に染まったのだった。

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