第287話 無駄
「でも完成と言っても、『解放』の力はすでに完成していますよ?てっきり魔力量をあげる訓練をするのかと……」
リリスに『解放』の力を完成するよう言われた康生だったが、あの力はすでに完成しているものだと思っていた康生。
なので、魔力を増やすための特別訓練があるのかと思っていたのだが、どうやらリリスの目にはあれはまだ完成はしていないらしい。
「我もじっくりと見てはいない。聞いただけじゃからな。じゃから一度見せて見てはくれないか?」
「私も見たいです!」
リリスとメルンに頼まれ、康生は仕方なく『解放』の力を使う。
「分かりました。でも速すぎて動きが見えないと思うので気をつけてくださいよ」
「その点については大丈夫じゃ」
『解放』の力の動きを見ることが出来ないと懸念していた康生だったが、リリスとメルンはすぐさまゴーグルのようなものを装着した。
「それは?」
見たこともない道具に、康生はたまらず質問する。
「これはですねっ、どんな速いものでも見逃さずに見ることが出来る魔道具なんですよ!私の自信作の一つです!」
とメルンが自信満々に説明した。
それを聞くだけで、やっぱり魔道具の方が人の技術よりも何倍もすごいのだと思いながら、康生は『解放』の力の準備をする。
「それじゃあいきますよ」
改めて宣言したのちに康生は体に力を入れる。
「『解放』」
『解放』の力を使った瞬間に、康生はまずはゆっくりと動いてみせる。
しかしそのゆっくりの動きでさえも常人の目からすれば一瞬のように見えるだろう。
だがこれはまだどこへ移動したか体が確認出来る。
だから次は最高出力で移動してみせる。
「はっ!」
先ほどとは違い、動きの軌道さえも確認させることはせずに、まるで瞬間移動でもしたかのように移動してみせる康生。
「――どうですか?」
最高速度を出した康生は、すぐに『解放』の力をやめてリリス達の元へ行く。
「うぅ……。私の魔道具をもってしても、最後の動きはうっすらとしか見えませんでした……」
するとメルンが自分の魔道具の性能を知らされ、悔しそうな表情を浮かべていた。
逆に康生は、最高速度でもうっすらと動きをとらえられたことに、若干の焦りを見せる。
「だけど、上王様の言った通りまだ完成されてはいませんね」
と悔しそうにしていたメルンもリリスと同様のことを言う。
「一体どこがだめなんですか?」
メルンにさえも駄目だしをされてしまい、康生は少しむっとしながらも尋ねる。
「無駄が多いのじゃよ無駄が。それに魔力の放出が雑じゃ」
とリリスがはっきりと答える。
そしてさらに続けるように、
「お主、このままそれを使い続けると、いずれ肉体が滅んでしまうぞ?」
と告げたのだった。
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