第286話 方針

「それじゃあ早速魔道具について教えますね!」

 ということで、お互いの技術を交換しあうことになった二人は、まずメルンの方から説明が入る。

 新たな技術を知れるということで、康生はわくわくしながら耳を傾けていた。

 しかし、

「康生はおるか?」

 説明をしようとしていた所で、リリスが研究所に入ってきた。

「ちょっと〜。今から大事な所なんですよ上王様〜!」

 リリスが来たということは、康生を連れて行かれると思ったメルンは口を曲げる。

「なんじゃ何をしようとしていたんじゃ?」

 来ていきなりそんなことを言われてしまったリリスは、大事なことの邪魔をしてしまったのかと思ったようだった。

「今から二人で新たな魔道具を作る話をしていたんですよ!」

「といっても、今は魔道具の説明を聞こうとしていただけですけど」

 とメルンに付け加えるように康生が説明する。

「そうか。まだ説明が始まってないから丁度よい。康生、それにメルン。今から我と一緒に来てもらうぞ」

「あれ?私もですか?」

 康生だけが連れて行かれるのではなく、メルン自身もついてくるように言われて、当の本人は意外そうに首を傾げた。

 康生も一体何をするのか分からなかったが、とりあえずリリスの言うとおりについていくことにした。

 そうして再びフードを被って移動し、とある部屋の前で立ち止まった。

「あれここって訓練所じゃないですか。私なんかがきても何かすることあるんですか?」

 メルンはどんな部屋か知っているようで、ますます訳が分からないといったように呟いた。

 確かに訓練所なら康生だけでもいい気がするが、それでもリリスがついてこさせたのだから何か理由があると思って、そのまま訓練所に入る。

「さて、康生。魔力の訓練をすると言っていたが、それよりも先にまずエルに頼まれていたことをしようと思う」

「エルに?」

 どうやらエルがリリスに何か康生のことについて頼んでいたようだった。

 康生は何も聞いていなかったが、こうしてリリスが取り組もうとしている時点で、康生に何か役に立つことなのだろうと感じた。

「これから康生には『解放』の技を完成させてもらう」

「『解放』を?」

 完成と、聞いて康生は少しだけ疑問が浮かんだ。

 何故ならあの技はあれで完成していると自分自身で思っていたからだ。

「『解放』って一体なんなんですか〜?」

 とここで『解放』を知らないメルンが興味津々といった様子で尋ねる。

「『解放』は康生が編み出した技。元の魔法は我が得意とする魔力放出じゃ」

「魔力放出?」

「あぁ。魔力を魔法という形で体外に出すのではなく、魔力そのままを体外に放出する方法。恐らく『解放』とはそれがメインの技なのじゃろ?」

 リリスに言われて康生はゆっくりと頷いた。

 確かにあの技は、自身の魔力を一気に放出させて速度を出す技だ。

 リリスの前では見せていなかったのに、そこまで分析されていたということは、どうやらエルがそれに気づいたからだろう。

 そして同時に、地下都市でリリスで戦った際に、リリスに吹き飛ばされたのは、その魔力放出という技だったのだと康生は気づいた。

「というわけで、今から康生には『解放』の力を完成させてもらう」

 と再びリリスは今後の方針を宣言したのだった。

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