第281話 魔法技術
「――さて。食事も終わったのでもういいですよね上王様!」
朝食を食べたメルンは早速というばかりに康生の元へ移動する。
腕をつかんできたので、その豊満な胸が必然的にぶつかるので、康生は必死に逃げようとする。
「こら。康生が嫌がっておるじゃろうが。少しは離れんかい」
とそんな康生を見たリリスは間に入って距離をとらせる。
「あぁ〜。これからじっくり調べるんだからいいじゃないですか〜!」
「調べるのは本人の許可をとってからと言ったじゃろうが!」
まるで聞き分けのない子供をしかるように、リリスはメルンの頭を叩く。
「え、えっと、調べるって……?」
そんな一連の流れを見守りながら尋ねる。
「あぁ。実は康生に一つ協力してほしいことがあるんじゃ」
「協力してほしいこと?」
「そうです!康生さんは人でありながらその体に魔力を有しています!その体の構造を調べれば!魔法は私たちだけでなく人間でも使えるようになるのではという仮説をたてたんです!」
「こらっ!声が大きい!」
大きな声で力説するメルンをリリスはさらに叩く。
それを見ながら康生はメルンが言った話を考えた。
もし普通の人でも魔法を使うことが出来ればどうなるのか。
そうなれば、もしかすると人と異世界人の壁が少し薄くなるかもしれない。
ただ、
「――そうなった場合、人と異世界人はまた大きな戦争を起こしかねません」
新たな争いが起こる未来を康生は視た。
「その通りじゃ」
そしてそれは当然、リリスも分かっていることだった。
「じゃからその方法を試すのはまだまだ先じゃ。じゃが、少しでも知っておけば何かが変わるかもしれない。我はそう思ったのじゃ」
何かが変わる、というリリスの言葉を聞き康生は考える。
確かに使い方さえ正せばそれはエルの夢にだって近づくことが出来る。
(でも……)
康生はどうしても踏みとどまってしまう。
「まぁ細かい話はいいんですよ!どうせしばらくここにいることになるんでしょうから、答えが出たときにやればいい話です!」
そんな中、メルンが明るい調子で言う。
「それを抜きにしても私は康生さんに、これからの実験のために色々話を聞きたかったんです!だからすぐに私の研究所に行きましょう!」
どこまでもまっすぐに、研究のために康生を使うことを悪く思う様子もなくメルンは言う。
「はぁ……。まぁ確かにこいつの言う通りじゃ。答えが出た時に聞こうか」
「はい。それでお願いします」
「よし!決まりですね!じゃあ早速研究所へ行きましょう!」
話が一段落ついたということで、先ほどから急かすようにメルンは研究所へ連れていこうとする。
「待て!康生はこれから魔法の訓練があるのじゃ!」
しかしそんなメルンをリリスは止める。
「えぇ〜、でも康生さんはリリス様しか使えないあの魔法を使ったんですよね?だったらあまりすることもないんじゃないですか?」
あの魔法、と聞いて康生は少しだけ考えたが、すぐに魔力を外に出す魔法を思い浮かべた。
「ねぇ、康生さんも色々研究したりしているんでしょ?だったら興味ありませんか?人の技術と魔法技術を組み合わせた研究に?」
とメルンは康生を誘うように、そんな言葉を投げかけてきたのだった。
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