第280話 食事中

「朝早くからすまないな康生」

「いえ、俺は全然構いませんよ」

 早朝。外で待機していた護衛の者に起こされた康生は、フードを被ったままとある部屋へ案内された。

 そこには横に長い大きなテーブルがおいてあり、一番奥の真ん中にリリスが座っていた。

 その隣には昨日――正確には今日だったかもしれないが、康生が寝ていた時に侵入してきた女の異世界人が座っていた。

 そのまま護衛の者に案内され、女の異世界人の正面に座らされた。

 一体何が始まるのかと思っていると、康生が座ったタイミングで部屋に料理が運ばれた。

 どうやら今から食事をとるようだった。

「昨晩はすまかったな康生」

 食事が運ばれてきたことでようやくリリスは口を開いた。

「い、いえ。別に気にしないでください」

「ほら!康生さんもそう言ってるんですから気にしなくていいですよ!」

「馬鹿者っ!お前が先に謝るのだ!」

「いたっ!」

 康生が気にしていないとしった女はすぐに世論だ表情を浮かべたが、リリスに叩かれてすぐに表情がしぼんだ。

「全く……。少しは常識をというのもを知らぬか」

 リリスは呆れるようにため息をはく。

「常識ですか〜?」

 しかし女はそんなリリスの言葉に少しだけ不満そうに口を開いた。

「研究者にとって常識っていうのは一番いらいなものなんですよ。非常識なことをしてこそ新たな発見があるんですから!」

 となにやら力説しはじめるが、リリスは聞く耳を持たずに料理に手をつけはじめた。

「康生も気にせずに食べてよいぞ」

「あっ、はい」

 正面ではまだなにやらしゃべっているようだったが、康生もリリスに習って食事に手をつける。

「それに聞いた話では康生さんも色々発明しているらしいじゃないですか!」

「え、えぇ、まぁ……」

 食事を食べ始めると、急に話を振られて口の中を急いで飲み込んで答える。

「だったら分かるでしょ!常識とはどれだけ不要なことか!」

「まぁ、まぁ発明に関してはそうですけど……。人と関わっていく上では常識は必要ですから……」

「ほら、康生はこう言ってるぞ」

 康生の言葉にのっかるようにリリスは言葉をつなげる。

 女は康生の言葉に少しだけ不安そうにしながらも、お腹が空いていたのか、それ以上何も言わずに食事に手をつけた。

「――あっ、そういえば」

 と食事に手を付けはじめた女がいきなり何かを思い出したように立ち上がる。

「自己紹介がまだでしたね!私はメルンといいます!以後お見知りおきを!」

 突然立ち上がられ、手を出されて自己紹介をされ、戸惑いの表情を浮かべた康生。

 しかしすぐに同じにように立ち上がって手を握り康生もまた自己紹介をする。

「俺は村木康生って言います」

 そうしてお互い自己紹介をすませたのだが、

「――食事中にやるものでない!」

 とリリスに怒られてしまった。

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