第278話 怒鳴り声

「ほうほう……なるほどなるほど……」


(…………うぅ)


「体は本当に人間みたいなんですね」


(…………うぅ、もう朝か……?)


「でも体内には魔力が流れてる……」


(……ていうかこの声は?)


「じゃあここを押せば……」


「いたぁっ!!」

 気持ちよく寝ていた康生の体に突然、激痛が走り、思わず起きあがる康生。

「あぁ、やっぱり痛いですか。ということは魔力はちゃんと体内で生成されているということですね」

 飛び起きた康生の耳に、聞き慣れない声が聞こえる。

 一体なんなのだと、覚めたばかりの目を動かし声の主を見る。

「――え?」

 しかし声の主の姿を見た瞬間、康生は固まってしまったら。


「あれ?どうしたんっすか?」

 急に固まった康生を見て、声の主は不思議そうに頭を傾げる。

「なっ、なっ、なっ!?」

 慌てて目を逸らし、そして逃げようとした康生は思わず足を崩してベッドから転がり落ちた。

「ちょっと、ちょっと一体どうしたんですか?私の顔に何かついていましたか?」

 ベッドから落ちた康生を心配するように、声の主はのぞき込む。

「っ!!」

 しかしそのせいで康生はまた目を背ける。


「――あっ。ひょっとしてこの格好がいけないんですかね?」


 そう言った声の主の女は、自らの服をつかんでパタパタと動かした。

 そうその人物は女性でありながら、薄い布一枚しか着ておらず、太股なんかはほぼ丸見えだった。

 それでも一応ギリギリの場所は隠してあったが、その反対に体にある女性としての二つの膨らみが強調しており、ほとんど布からはみ出ていたのだ。

 目が覚めた瞬間に、そんな格好の女性がベッドの上にいたのだから康生は思わずびっくりしたというわけだ。


「何かありました!?」


 すると、康生がベッドから落ちる音を聞いたのか護衛の者が勢いよく扉をあけた。

「あっ、やばっ」

 すると女性は扉が開くと同時に窓から逃走を謀ろうとする。

「あっ!お前はっ!」

 どうやら護衛はその女性のことを知っているようよで、逃げる女性を慌てて捕まえようとする。

「ごめんね〜。もっと体をイジりたかったんだけど、捕まったらまた怒られちゃうから、また今度ね〜!」

 そう言って女性は窓に足をかけた。

 しかし、

「誰が逃がすと言ったか!」

 扉の方から新たな声が響いたかと思えば、窓に足をかけていた女性は一気に部屋の中へと引きずりおろされた。

「ちょ、ちょっと痛いじゃない!」

 その女性の足には頑丈な鞭が絡みついており、どうやらそれに引っ張られたようだ。

 そしてそんな鞭を扱う者は康生が知っている中で一人しかおらず、

「全く!まだ康生とは会うなと言ったじゃろう!」

 怒鳴り声をあげて、鞭を構えたリリスが扉から入ってきたのだった。

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