第276話 領地
「只今終わりました」
襲撃にあってからしばらくの間、カフェで休んでいた康生とリリスの元に、護衛二人がやってくる。
どうやらリリスの失脚を狙っていた異世界人達の処理が終わったようだ。
処理と聞くと、実際怖い事を思い浮かべていた康生だったが、実際の話をリリスに聞くと、単に必要な情報だけしゃべらせるだけだという。
当然その後は人間界でいう警察のような組織に引き渡し、事なきをえたそうだ。
「ふぅ。ようやくいけるか」
ようやくリリスの国にいける事もあり、リリスはため息混じりに呟いた。
本来ならば昨日のここについてから行く予定だった所が、今日の朝までずれた。そして先ほどの一件があったせいで、結局時刻は昼頃になってしまった。
本来ならば昼食を食べる時間であろうが、これ以上この街に留まると、また新たな事件が起こりかねないという事もあり、急いでリリスの国へ移動する事となった。
「よし。じゃあ行くぞ康生」
「はい」
そうしてリリス達一向は転移魔法を行う場所へと移動を始めた。
「すごいですね……」
目的地へ到着した康生は、その光景を見て思わず口に出してしまった。
慌てて口を押さえた康生だったが、どうやら今度は見逃してくれたようだ。
そして同時に今度は声に出さないように辺りを見渡す。
転移魔法を使う事が出来るという結晶は、施設の中央に浮いている。
結晶の大きさは人一人よりも大きく、存在感を放っていた。
だがそれに劣らず、周りの建物が太古の神殿のような造りになっており、何本もの柱がむき出しで並んでいた。
そんなファンタジーな景色に康生は感動しながら思わず足を止めてしまう。
「おい、早く行くぞ」
しかし今度はリリスに注意され、康生は慌てて後を追いかける。
もうすでに準備は整っていたのか、リリスが結晶に近づくや否や、近くにいた異世界人が何も言われずに準備を始める。
わずかの間その作業を見守っていると、どうやらすぐに準備が出来たようで、作業をしていた異世界人は結晶から離れる。
逆にリリス達は結晶に近づいていくので、康生も後を追う。
そうして結晶が目と鼻の先に来たところで、今まで淡い光を放ってた結晶が強く光りだす。
あまりに眩しすぎて康生は思わず目を閉じる。
だがあまり時間が経たないうちに光は収まった。
恐る恐る目を開けた康生は、今度は口を開けて固まってしまう。
見渡す限りの大きな木に、空中には見たこともないような鳥を飛び交っていた。さらに木の中には同じように見たこともない獣が徘徊しており、まさに地獄か何かだと勘違いしてしまいそうだった。
「さて。ようやく我の領地についたか」
リリス達は康生とは違いその光景を当然のように見ている。
それもそうだ。
何故ならここはリリス達が暮らしている場所なのだから。
そうして本当の意味で、康生は異世界人の土地に足を踏み入れたのだった。
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