第275話 食事

「ふぅ……。これで一件落着じゃな」

 リリスを失脚させようとした男と、康生を連れ去った異世界人二人を護衛に任せたリリスと康生はひとまず近くの飲食店で休憩をとることにした。

 注文をリリスに任せていると、ジュースのような飲み物が出される。

 雰囲気的にはカフェのようなものだが、席の一つ一つが個室になっており、どこか高級な店のようなものを感じさせられた。

「ん?どうしたんじゃ?」

 そんなオロオロしている康生を見たリリスは疑問を浮かべる。

「い、いや。ここって結構高い店なんかじゃないかなって……」

「高い店?そんな訳ないじゃろうが。ここは貴様等人間の世界にもあるカフェのようなものじゃ。大衆向けの店じゃから値段もお手頃じゃよ」

「大衆向け……」

 個室という時点で康生にとっては、全く大衆向けではないように思える。

 するとそんな康生の考えに気づいたのか、リリスは苦笑するように話す。

「そういえば人間の世界でいうカフェとはもっとオープンな店じゃったの。だが我々の世界ではカフェとはこういうものじゃ。ここは色んな種族がいる。種族同士のいざこざを避けるためにもこうして個室になっているんじゃよ」

「そういう理由が……」

 そういえばリナさんが率いていた異世界の部隊も、初めは種族同士の溝があった事を思い出す。

 個室にまで分ける所を見ると、どうやら種族間の問題は相当なものらしい。

「さて、護衛の者達があいつらを処理してくれるから、少しだけ休憩するぞ。恐らく10分程度で終わるじゃろう。それが終わったら早々に我の国に行くからな」

「分かりました」

 処理、という言葉に若干引っかかりつつも、康生は異世界で初めての飲食を口にする。

 ジュースのようなものと共に木の実のデザートのようなものが出てきたので、康生とリリスは護衛達が戻ってくる間に食事を堪能したのだった。




「康生大丈夫かな……」

 場所が変わり、エル達がいる地下都市。

 康生がいなくなった地下都市で、エルは毎日のように畑のお世話を手伝っていた。

「きっとすぐに戻ってきますよ!」

「そうですよ!なんたってエルさんが待っててくれるんですから!」

 エルがため息を吐いてると、周りから住人達が励ましてくれる。

「そうだね。弱気になってちゃいけない!康生も頑張ってるんだから私も頑張らないと!」

 そうしてエルは畑仕事に精を出していたのだった。

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