第273話 事実
「俺達の望みは人間の絶滅。その為にあいつの子供であるお前がいなくならなきゃいけねぇだよ!」
少しだけ感情的になったが、話終わるとすぐに表情を元に戻す男。
しかしこうまでも敵意を一方的に向けられて、リリスはさぞ不快な思いをしているだろうと心配になった康生だったが、今はそんな事を心配している暇ではないとすぐに気づく。
どうにかしてリリスを守らなければいけない責任が康生にあるのだ。
(でもどうやって……。俺には力しかないから……)
しかし一向にいいアイデアが浮かばない康生。
そして敵は待ってくれるほど甘くはない。
「それじゃあ早くついて来てもらおうか。民衆の前で、堂々と、人間と行動を共にしている事を話してもらおうか!」
いよいよ攻撃を仕掛けるしかないかと考えていた康生だったが、すぐさまリリスの声に止められる。
「つまり貴様は、この人間の存在が必要なのだな?」
「あぁそうだよ!俺が必要なのはその人間さ!そいつさえいればお前の失脚などたやすいからな!」
さらに敵を焚きつけてしまい、リリスは何を考えているのかと康生は疑問に思っていると、康生はさらに戸惑いの表情を浮かべる。
「……貴様、何故笑っているのだ?」
そう。リリスは先ほどの焦った表情から一転。
目の前の男が先ほど見せた笑みのような悪い顔を浮かべていた。
「貴様は今言ったな。人間が必要だと言ったな?」
「だったらそれがどうしたっていうんだよ」
一体何をするつもりなのかと康生はリリスの言動を息を呑みながら見守る。
「貴様の今の言動。しっかりと録音させてもらった。これを民衆に公開すれば、人間と共存したがっているのは誰だと思うかな?」
そう言ってリリスが取り出したのは小さな結晶の塊だった。
今の話を聞く限り、どうやらそれは音声を録音する機能がついているようだ。
「はっ!そんなもの!お前がそいつを連れて来た事は今やこの街の皆が知ってる!昨日の騒ぎのおかげでな!お前がいくら言おうがその人間と一緒に街を歩いていた事が分かればそんなもの……」
と男がまくし立てるように言う中、男の声を遮るようにリリスは言う。
「こいつは人間じゃない。異世界人だ」
「なっ、何!?嘘を言うな!そいつは貧弱な人間なんじゃ……!」
ここでリリスが勝負にでる。
康生は状況を見ながらそう確信する。
そして同時に、リリスの言葉に会わせるように康生は異世界人である証拠として魔法を使用しようとする。
だが、
「おい!いたぞ!」
それよりも先に、背後から康生を捕まえた二人組の異世界人が現れた。
「あっ!依頼主じゃないですか!すいません!そいつ高度な魔法を使って逃げたもんですから少しだけしくじりました!」
「でも今すぐ捕まえるんで待ってて下さい!」
やはりあの男が二人に依頼をしたのだろう、という事が分かると同時に、男は雇った二人から康生が魔法を使った事実を聞かされたのだった。
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