第271話 堂々
「――康生っ!」
一人路地裏に残された康生だったが、しばらくそこで待っているとリリスと護衛の二人が駆けつけた。
「リリス!」
リリス達に気がついた康生はすぐさま立ち上がる。
「ごめん……。勝手に捕まっちゃって……」
そしてすぐに頭を下げる康生。
昨日からリリス達に迷惑を掛けていた事を康生は気にしていたのだろう。
だがリリスはそんな事気にしないという様子で康生の腕を掴む。
「その話は後じゃ。今はとにかく我の国まで行くぞ。そこまで行けばひとまずは安心出来る」
腕を掴んだのは恐らくこれ以上康生とはぐれるわけにはいかないと悟ったからだろう。
リリスの考えが分かっているからこそ、今まで失態を犯した康生は素直にリリスに引っ張れることになった。
しかし、
「おい!まだ近くにいるはずだ!」
遠くの方から異世界人の声が聞こえる。
声の主は先ほど康生を捕まえた奴の一人だった。
どうやら康生が使った魔法がもうなくなってしまったらしい。
「早く動かないと不味いな」
「気をつけてリリス。相手は熱源を探知する魔法を使ってくるよ」
急いで逃げようと足を進めるリリスに、康生は注意を促す。
しかしリリス達はその情報に対して気にとめる様子もなくに足を進めた。
「その程度の対策ぐらいはしておるから安心しろ」
そう言ってリリスは、康生と護衛達と共に路地裏を駆け抜ける。
「――どこに行くんですか上王様?」
だが次の瞬間、リリスが踏み込んだ足に向かって魔法の矢が降り注いだ。
「リリスっ!!」
康生は咄嗟にリリスを守ろうと腕を引っ張る。
しかしそれよりも先に護衛の二人が体を動かし、攻撃を防ぐ。
「とうとう本性を現したか?」
護衛達には目もくれずにリリスは攻撃してきた相手、先日の異世界人をにらむ。
「そんな目で見ないで下さいよ。俺はただあなた達とお話がしたいと思っていただけですから」
「お話か。……それにしては人数がやけに多いと思うがの?」
リリスが呟くと同時に、周囲を大勢の異世界人に囲まれていることに康生は気づいた。
数にしてざっと数十人程度だったが、異世界人相手では一人一人の戦力があり、数十人という数は侮れるものではなかった。
「勿論こちらの質問に答えていただけなければ、こちらもそれなりの対応はさせていただきますけどね」
それは脅しだった。
質問に答えなければ、一斉に攻撃をする。
いくら強いリリスでも、全方位の敵を一度に破ることは出来ないだろう。
「ふんっ。やれるものならやってみろ」
だがリリスはそんな異世界人の威圧に負けず、堂々とした態度で答えたのだった。
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