第268話 捜索
「よし。それじゃあすぐに行くぞ」
「「はっ」」
早朝。
ようやく日が登り始め生物が活動を始めようとする時間。
リリスに起こされた康生は重い瞼をこすりながらも、フードを羽織る。
元々は昨日の夜にはリリスの国に到着する予定だったので、こうして一日遅れてしまった分、急いで行くという事だ。
それに昨日の事もあるので、康生自身あまりこの場所に長いはしたくないと思っていた。
「今度は離れるでないぞ」
「分かってます」
昨日の事で、康生は十分に怖さを知った。
そしてリリスの事情も聞いたことにより、これ以上迷惑をかけてはいられなかった。
という事で、朝食さえもとらずリリス達一行は朝早くに転移門へと急いだ。
「――出てきましたぜ」
「――よし作戦は手はず通りだ」
だがその姿を遠目で見ている人影が。
それぞれが何らかの形で武装している二人の異世界人達が康生達の足取りを追っていた。
まだ目が覚めていない康生は勿論の事だが、早く国に戻ろうとしているリリスや護衛の人達はこの視線に気づくことが出来なかった。
そして次の瞬間、
「んっ!!」
康生が背後から強い力で引っ張られる。
同時に口と体を押さえられ康生の身動きは封じられた。
そしてそのまま康生は闇の中へと消えていく。
「――ん?康生……。っ!どこじゃ!康生はどこに行った!」
しかしリリスはすぐに異変を察知したのか、康生がいなくなった事に気がつく。
それが分かると同時に護衛の人達はすぐに康生を探しにいこうと視線を巡らせる。
「――あれ〜?こんなところでどうしたんですか〜?」
だがそんなリリス達の元に数人の異世界人達がやってくる。
「――貴様らかっ!」
現れたのは先日出会った異世界人。
明らかにタイミングが良すぎる登場に、リリスはすぐさま疑いの視線を向けた。
「あれ〜?そんなに怒ってどうしたんですか?昨日の件はもう謝ったのに。やっぱり上王様は短気なんですかね〜?」
「貴様っ!」
リリスが突っかかろうとする所を護衛の二人はすぐに止めた。
まだ早朝とはいえ、周りには人がいる。
リリスの大声があった事もあり、徐々に人も集まっているようだった。
そんな中、昨日は謝ったと主張する異世界人に向かってリリスが手をあげてしまったら、上王としての評判が落ちるのだとすぐに察知したのだろう。
だからこそ護衛の二人はそいつを無視して、すぐにリリスを連れて康生の捜索に移ろうとする。
しかしその考えは相手に読まれていた。
「あぁそうそう!昨日のお詫びに何かしたいんですけどちょっとそこで食事でもどうですかね?」
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