第263話 門番
「ここが異世界ですか……?」
旅をすること三日。
今までの風景は何もないただの荒野だったが、しばらくするとリリスが言っていたように建物が見えてきた。
建物の形状は康生達人間が知っている形状とは大きく違い、形がおかしな巨大な木が何本も並んでいた。
「正確にはここはまだ異世界じゃないがな。我々の土地は本来なら海の上にある」
異世界の建物を見て康生が感動しているところにリリスが説明する。
話を聞くと、どうやらここが異世界人達が住んでいる場所から近く、人が住んでいる場所へ移動するのにもっとも都合がいい場所だからという。
「俺が言うのもなんですけど、もっと街を広げたりしないんですか?」
リリスの説明を聞いて康生は一つ疑問に思った。
人が住んでいた土地にこれだけの街を作れるのなら、そのまま他の土地も奪ってしまえばいいのではないかと。
だがリリスは首を横にふる。
「それは駄目じゃ。この世界の土地は我々と人との戦いで使い物のならない状態になってしまった。それはお主もよく知ってるじゃろ?」
「そうか……」
確かに康生もここまで来る途中や、エル達との旅の中でいかにこの土地が腐っているのかを目の当たりにしてきたのだ。
川は汚染され、土は人と異世界人の死体で腐り、とても住めるような場所ではなかった。
「とにかく今からお主はこのフードを被れ」
いよいよ街の中に入ろうとした時に、リリスは康生にフードを渡す。
「これは?」
「お主は異世界の中で顔が知れているからじゃ」
なるほど。恐らくリナさんとの戦いがあったせいだろう。
リリスも康生の存在を元々知っていたと同じ事だ。
「それと中に入ったら絶対にしゃべってはならんぞ。それに勝手に行動するのも許さん。常に我のそばにおるように。いいな?」
「わ、分かりました……」
リリスの緊迫した表情を見て、康生は遅れながら気づく。
人が異世界人達の住む場所に行くという事はそれだけの事だと。
同時に、エルが地下都市に入ってきたときの表情を見ればそれは一目瞭然だった。
「では行くぞ」
「「はっ!」」
そうして康生は顔を隠し、口を閉じ、常に何もせずにリリスのそばから離れぬようにし、異世界人達の土地へ足を踏み入れようとした。
リリスは上王様だからか、他の異世界人達が入る入り口とは別の入り口の方へと向かう。
入り口につけば、護衛の二人がなにやら門番と話していたが、難なく入り口が開かれた。
「さて。このまま何も問題が起きなければいいんじゃが……」
足を踏み入れる瞬間に、リリスがそんな不安を口にした。
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