第249話 ゲーム
「康生!宴とは楽しいものじゃのっ!」
「そ、そうですね」
時刻は夜。
昨日と同じように飾り付けられた広場で、今日も宴が始まっていた。
「ちょっと康生とくっつきすぎよ!」
「別にいいじゃろうが!」
「よくないっ!」
エルとリリスはいつものように口喧嘩をしているが、康生はもう慣れたというような態度でそれをボーと見つめている。
「康生、止めなくていいのか?」
するとそんなエル達を見ていた時雨さんがそっと康生に耳打ちしてくる。
「俺が入ると余計ややこしくなりそうなんで、もう諦めました……」
「そうか……」
康生が苦笑を浮かべると時雨さんも同じように苦笑を浮かべる。
どうやら時雨さんもエル達の口喧嘩にはもう慣れてしまったようだった。
「全く……上王様とあろうお方が短気な性格では困ります……」
その横でもまた二人の口喧嘩を見守りながらため息をこぼす者が一人。
「大変そうですね……」
リリスさんの心中を察して康生は苦労していると思いながらも声を掛けた。
「全くだ……」
その反応を見るにどうやら二人は向こうでもこんな風に口喧嘩をしていたのだと康生は察する。
「んっ?なんじゃ時雨、リナよ。もしかして貴様等も康生を狙っているのか?」
すると口喧嘩が終わって康生へと意識が向いたリリスが、康生と話している二人に唐突に言ってきた。
「わ、私は別にそのような事はありませんっ!」
「そ、そうです!私はこのような者などかけらも興味がないですからっ!」
昨日から息がぴったりな二人は揃って否定をし、顔を真っ赤にしながらその場を離れていった。
「……もう、時雨もリナも油断ならないんだから」
「ん?何か言った?」
「い、いやなんでもないっ!」
なにやらエルが独り言を呟いたようだったが、康生は聞こえなかったようだ。
そうして宴が盛り上がっていく中で、康生の元に二人の異世界人が訪れる。
「――先ほどはすまなかったな」
そう言って謝ってきたのは、康生がリリスの前で倒した護衛の一人だった。
隣にはもう一人の護衛がいて、どうやら康生に謝罪をしにきたようだった。
「我々の力の差は歴然としていた。なのにああも突っかかってしまって悪かったな」
突然の謝罪に康生は慌てながらも頭を下げ返す。
「い、いえ俺もお二人の気持ちを考えず無礼な事をっ!」
と、謝罪をしていると突然リリスがそばに寄ってくる。
「なんじゃ?今朝の続きか?」
「いえ違います上王様」
「我々はこの少年に今朝の非礼謝罪をと」
「なるほどなるほど……」
するとリリスは二人の言葉をどう受け取ったのか、なにやらイタズラをたくらんでいる子供のような目つきになる。
「そうじゃ康生!宴という事じゃから一つゲームをしようかっ!」
「ゲ、ゲームですか?」
リリスの提案に若干の嫌な予感を覚ええつつも、恐る恐る聞き返す。
「そうじゃ!今から我と康生で試合をするのじゃっ!」
そんなリリスの一言でその場の全員が一気に静まりかえってしまった。
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