第247話 食料

「ほぉ〜ここが畑という奴か!沢山の実が一カ所に固まっていて食べやすそうじゃな!」

 初めての畑を見たリリスはそんな感想を漏らす。

 基本的に異世界人は食料は自ら森で採ったりするようで、自分たちで育てることは全くしないらしい。

 さらにいえば異世界人の中には植物の成長スピードを増加させる魔法もあるのだが、それらは全て無用の長物として言われているみたいだった。

 康生達からすればそんな魔法こそが強力なのだと思うが、異世界の森というのはそれだけ植物が育つのが早く魔法を使うまでもないようだった。

「おっエルちゃんじゃないか!今日は英雄様とデートかい?」

「あっ、ほんとだ!エルちゃんと英雄様がデートしてるっ!」

 畑に行くことで、自然にエルと康生の存在が目立ってしまう。

 しかも普段は二人で歩いているような事がないため、人々はそんな二人を珍しいような目で見つめていた。

「ち、違うわよ!私と康生はそんなんじゃ……」

 皆に言われる中、顔を真っ赤に染めながらもいつものように否定しようとするエル。

 しかし、

「なんじゃ違うのか?」

 この場所にはリリスもいるのだ。

 ここでむやみやたらに違うと否定すれば、即刻康生は異世界人達に連れていかれない。

 だからこそここは無理にでも恋人のように振る舞い、リリスを早く諦めさせるのだ。

 これが康生達が決めた作戦だったのだ。

「そうなのっ!私達デートなのよ!ねっ、康生!」

「あ、あぁ!そうだな!」

 リリスから疑いの視線を向けられながらも二人は必死に恋人の振りをする。

「へぇ〜まさか本当に二人がそんな仲だったとは!」

「これは今日も宴を開かないとならんかのっ」

「別にそこまでしなくても大丈夫よっ!」

 最近広場で宴をしている人達はすっかり宴を開くことに慣れてしまったが、そう何度もやると皆の食料が少なくなってしまう。

 だからこそエルはしっかりと否定する。

「なんじゃ?宴?」

「ん?君は確か……」

 突然話に入ってきたリリスを見て皆は首を傾げ。

「なんじゃ聞いておらんのか?我は異世界の上王をやっておる」

「じょ、上王様っ!?」

 まだこの情報は皆に行き届いていなかったのか、リリスの話を聞いた人々は皆一様に驚いたような顔をする。

「それで宴というのは一体……」

 自己紹介が終わったことでリリスは再度宴について聞こうとする。

「ちょ、ちょっと待ってよ!何度も宴を開いたら食料の在庫がなくなってしまうわよ!」

 だがエルが必死に止めに入る。

「なんじゃ?貴様等食料が不足しておるのか?」

「そりゃ地下で暮らしているわけだからね……」

 そんな話を聞き、何を思ったのかリリスは突然衝撃の発言をする。


「じゃあ我々の食料を分け与えてやろう!それで宴というものは出来るのじゃろ?大丈夫じゃ、我々の食料はここの人々に与えても一ヶ月は持つ!」

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