第246話 道中
「さぁ康生!我にこの場所を案内してくれ!」
「は、はぁ……」
「康生!案内しなくてもいいからね!そんなのはうちの兵士達にいくらでもやらせるから!」
「なんじゃ!お前は邪魔をするな!これは我と康生の初デートじゃぞ!」
「ふんっ!そんなもの知らないんだから!」
(はぁ…………)
二人に挟まれた康生は口には出さないようにそっとため息を吐くのだった。
今日、というかこれからは工房に籠もり訓練をしたいと考えていた康生だったが、どうやらこの状況ではとてもそんな事が出来るようではないと知り、ただひたすらにこの状況をどうしようと頭をひねらせるのだった。
「おい康生!貴様こんな奴と付き合ってるとガミガミ文句を言われるだけじゃぞ!まだ我の方が貴様を沢山甘やかさせてあげれるわ!」
「何を言ってるのよ!私がいつ康生にガミガミ言ったのよ!そっちこそ康生なんかと付き合ったら絶対奴隷のようにこき使うに決まっているわ!」
「何をっ!?」
「何よっ!?」
二人は姉妹だというのにとても仲が悪い。
どうしてそんな二人を俺一人に任せたのか、リナさんに少しだけ文句を言いたくなる。
でも必死にそれを我慢し、今は二人の喧嘩を止めることに意識を向ける。
「と、とりあえず畑に行かないか?きっとそろそろ収穫の時期だから色々実っている物が見れると思うよ?」
「畑?なんじゃそれはっ!我は見てみたいぞ!」
エルの時もそうだったが、どうやら異世界人達は畑なるものを知らないようだった。
異世界人達曰く、森になっている木の実を食べる出そうで、自らそれを育てようとはしていないらしい。
「うん!じゃあ康生行こっ!」
「あ、あぁ」
畑に行くことが決まり、エルはさっそく康生の腕を引っ張って進もうとする。
「ならんぞ!それは我の立ち位置じゃ!」
しかしリリスはそんなエルを見て対抗するように康生の反対側の腕を掴む。
「ちょっと康生が歩きにくそうじゃない!」
「じゃあ貴様が離せばいいじゃろう!」
「私の方が先だったんだから離すのはそっちでしょ!」
「そんな事ないわ!順番なんて関係ないのじゃ!」
行き場所が決まった事にほっと一安心をした康生だったが、またもや二人は口喧嘩を初めてしまい康生はただただ疲れるように足を進めた。
道中すれ違う人達からはじろじろと視線を向けられ、康生はなんともどうしようもない気持ちになった。
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