第245話 アプローチ

「――これはどういう事で?」

 地下都市中央にある建物にて、康生達は机を囲んでいた。

 その場には康生、エル、時雨さん、リナさん。そして先ほどから表情が読めない上代琉生。最後に上王様もといリリスに護衛の男が二人だ。

 あの後、リリスは本当にこの地下都市へと足を踏み込み、結果この建物まで案内される事になった。

 さらに驚いた事は兵は少数だけを地下都市に入れ、残りの兵はすべて帰した事だ。

 そしてこの場には護衛の二人――康生が倒した方はエルが回復してあげた――だけがリリスのそばにいるだけだった。

 警戒しているのかしていないのか分からないその態度に康生達はひどく困惑するだけだった。

「貴様は誰じゃ?」

 康生達とは自己紹介をしたが、ここで新たに上代琉生が登場した事により、リリスはじっと値踏みするように見る。

「失礼しました。俺は上代琉生。ここでは支援を主にやっております」

「支援のう……」

 上代琉生の言葉は確かに嘘ではない。

 ただ、諜報と言わずに支援と言ったのは、リリスを警戒しての事だろう。

「さて、それじゃあ我の部屋を案内してもらおうか」

「部屋ですか……」

 その流れで自身の部屋を望んだリリスに上代琉生は困ったように頭を悩ませる。

 それは上代琉生だけでもなく康生達も同じだった。

 現状、この地下都市は異世界人達が来てからすでに建物の数が間に合っていなかった。

 今は仮に一カ所にまとめて泊めているが、これからはそれぞれに家を割り当てるように考えているぐらいで、上王様であるリリスを泊める部屋は思いつきもしない。

「分かりました。では早速ご案内いたしましょう」

「えっ?」

 上代琉生が案内するといい康生達はそれぞれ疑問の表情を浮かべる。

 一体どこに案内しようとしているのかと思っているが、上代琉生は俺達に何も話すことなく案内しようとする。

「よし。じゃあお前達二人で我の荷物を運んでおけ。我は康生とデートしてくる」

「えっ!?」

 リリスの言葉に康生は思わず声をあげる。

 エルから康生を奪う宣言をしてから今までリリスは今のように何度も康生にアプローチをかけてきているのだが、未だに慣れる様子はない。

「し、しかし上王様一人ではっ!?」

「そ、そうです!せめて我々だけでもっ!」

 だが当然のように護衛の二人は止める。

 それもそうだ。仮にもここは敵地……とまでは行かないが、仮にも味方ではないのだ。

「構わなん。なにせ康生は我と結ばれるのじゃからな」

「そんな事は絶対にさせないわよっ!」


 こうしてこの地下都市に新たな住民が増え、康生を巡って女の争いが勃発しようとしていた。

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