第244話 挑発

「既に康生とお嬢様は恋人関係になっております」

 リナさんの発言に康生、そしてエル共々顔を真っ赤にして視線を向ける。

「リ、リナさん何をっ……!」

 慌てて否定しようとするが、すぐにリナさんに止められる。

 一体どういう事かと思いながらも康生は口を封じられ何も言えずにいると、

「そうか二人は恋人同士……」

 赤髪の少女はリナさんの言葉を信じたように呟いた。

 そして康生は気づく、どうやらこれはリナさんが考えた作戦なのだと。

 康生とリナが付き合っている事になれば、赤髪の少女は素直に諦めてくれると。そういう作戦なのだと気づく。

 どうやらエルもすぐにそれを理解したようで、若干恥ずかしがっているが、じっと赤髪の少女を見ていた。

「それじゃあ全くの無関係ではないか……」

「え、えぇだからそう言ったでしょ!」

 赤髪の少女が上手いこと信じてくれたおかげで、エルもさらに強気にでる。

 とあれ康生は一安心する。

 このまま行けば、本当に結婚する話が決まってしかねないかと思ったからだ。

 そんな甘い考えで康生はその場を眺めていると赤髪の少女はとんでもない発言をするのだった。

「じゃあすぐに奪ってみせるまでじゃ」

「えっ!?」

 赤髪の少女の言葉に、エルはすぐに驚いたような声をあげた。

「なんじゃ我がそう簡単に諦めるとも思ったか?」

「そ、それは……」

 先ほどまで強気だったエルだったが、予想外の返答に対し戸惑いを見せている。

「じょ、上王様……それは……」

 咄嗟にリナさんも反論をしようとするが、言葉が思い浮かばないのか、すぐに口ごもる。

 すでに康生とエルとの交際は話した。

 それでもまだアタックするとなれば、もう逃げる口実を作ることは出来なかった。

「よし!じゃあ我はこれからこの地下都市で暮らすとしよう。そしてすぐに貴様を虜にしてやる」

 赤髪の少女は、その無垢な体な対し、不適な笑みを浮かべるのだった。

「そ、そんなの認めないわっ!」

 それでも最後の抵抗と言わんばかりにエルは声を荒げる。

「なんじゃ?もしかして康生に愛されてない自信でもあるのか?」

 しかし赤髪の少女はまるで、挑発するかのようにエルを見る。

「そ、そんな訳ないじゃない!私は康生にすっごく愛されているから!」

「それじゃあ我が何をしようと困る事はないじゃろう?」

「そっ、それは……」

 上手く言葉に乗せられてしまったエルはとうとう押し黙る。

 そうしてエルが何も反論してこない事を確認した赤髪の少女は康生に向かって笑顔を向けた。

「我の名前はリリス。これから貴様を我に惚れさせるために頑張るからよろしくの!」

 そうして赤髪の少女、もとい上王様、もといリリスという少女が康生達の地下都市で生活する事になった。

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