第243話 恋人

「だってあいつは私の妹なんだから」

「え?」

 エルの妹。その言葉を聞いて康生は思わず赤髪の少女とエルを見比べる。

 確かによくよく見れば目元や顔立ちなどが似ていた。

「なんじゃ、我の顔をじっと見つめて」

「い、いえなんでもないですっ」

 しかし性格の方は全くの正反対のようだった。

 エルが温厚で優しいのに対し、赤髪の少女は気高く高圧的だった。

「それでリナ!お主も我と康生の結婚に反対なのか!」

 リナが仲裁に入ってくれたが、やはり赤髪の少女は康生と結婚する意志を曲げていないようで、リナに突っかかる。

「だからっ!」

 そして再びエルが反論しようとするが、すぐにリナが抑制する。

「――少し整理させて下さい」

「整理?」

 リナさんはあくまでも冷静に、どうしてそうなったのかを赤髪の少女から聞き出そうとする。

「まず、上王様と康生は初対面なはずです。なのにどうしていきなり結婚などと仰ったのですか?」

 そうだ。

 康生もそこが一番気になっているところだった。

 何故初対面の康生に突然結婚を申し込んできたのか。

 単純に疑問に思っていた。

「それは簡単な事よ。我は強い者と結婚すると決めていたんじゃ。だから強い康生と結婚するのじゃ」

「意味分からないわ!」

 だがここでエルが爆発する。

「結婚は好きな人同士がするものでしょ!なのに相手が強いから結婚するっておかしいでしょ!」

 確かにエルの言う事はその通りだと康生も思う。

 だが、相手が上王様という立場ならばそれが違ってくるのではないかと、康生はすぐに考えた。「貴様はそんなんだから甘いんじゃ。いいか我は上王じゃぞ?そんな相手がたかだか好きというしょうもない感情で相手を決められると思うのか?」

「それは……」

 やはり、想像していた通りに上王という立場上、様々な問題があるのだろう。

「それにこれは貴様と関係ないじゃろう。まぁ貴様と康生が恋人関係だったら別じゃがの」

「そ、それは……!」

 赤髪の少女に言われ、エルは押し黙る。

 確かに康生とエルは恋人同士ではない。

 でも康生もこの結婚に反対している以上、エルの意見を支持したいと思っている。

 でも異世界人の世界を知らない康生には迂闊に口を開く事は出来ませんでした。

「あら?それでは関係ありますね」

 とそんな時、リナさんが口を開く。

「なんじゃと?」

 リナの言葉に赤髪の少女は何かを想像したように、訝しげな視線を送る。

「既に康生とお嬢様は恋人関係になっております。ですので、お嬢様はこの問題に関係ないどころか当事者の一人ですよ?」

 リナさんの言葉に康生、そしてエルは顔を真っ赤にしてリナさんへ視線を送った。

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