第236話 進行

「――なるほどそういうことか」

 上代琉生から説明を聞いた時雨さんとリナさんは納得するように頷く。

 二人はつい先ほど目覚めようで、どうやら急いで康生とエルの元に来たのだろう。

 その途中で、上代琉生の話を聞きこうして病室の中で話し合っていた。

「そういうことなら何人か兵士を渡そう」

 そして時雨さんはすぐさま二つ返事で答える。

「ありがとうございます」

 無事に認められて、上代琉生はどこか嬉しそうな、安心したような表情を浮かべていた。

 だが、上代琉生が提案したのは人間だけではなく異世界人達も含めてだった。

 だからこそリナさんの返事を待っていたが、リナさんは一向に口を開くことはなく、何かを考えているようだった。

「何か不都合でもあるの?」

 エルも提案には賛成のようで、じっと黙っているリナさんを見て首を傾げる。

「い、いや。その案自体は私は全然賛成だ。だが私の部下は私の意向だけで決められるものではない。そもそも私たちはこれからどうするのかもまだ決まっていないのだ」

 これからどうするのか。

 それはこのまま人間達と一緒に暮らすか、異世界人達が暮らしていた場所に戻るか。

 恐らくそれで考えているのだろうと、その場の者は瞬時に考えた。

 同時に康生達はまだこれから先の事を何も決めていなかった。

 戦いに勝ったのはいいが、上代琉生とリナさんが言う通りさらに敵が攻めてくる可能性はとても大きい。

 そして今回の戦いに参加してしまった以上、リナさん達の部隊は人間から狙われてしまう。

 だからこそ康生達と共に行動するのかいいだろうと考えているようだが、リナさんはどうもそんな簡単な話では片づけられないようだった。

「……正確には私の部隊ではないんだ。本来なら我々はお嬢様を連れ戻し人間達を滅ぼすという任務の元でここにきた」

 考えがまとまらなくなったリナさんは、事の経緯を皆に話す。

「だが今我々は元の任務から逸脱した行動をとっている。だから何かしらの処分が向こうから下るのではないかと。それを見てから今後の事を決めようかと思っていたが……」

「それがまだなんですね?」

「あぁ、そうだ」

 康生が訪ねるとリナさんはゆっくりと頷いた。 異世界人達の世界のルールを把握していない康生達は、どうしようもないと思いながら何かいい案を思いつこうと考える。

 しかしその時、

「――大変ですっ!ただ今この地下都市に向かって異世界人達の軍勢が進行していますっ!」

 病室の扉を勢いよく開けて兵士が入ってきたのだった。

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