第3章:異世界

第234話 誤魔化す

「う、うぅ……」

 突然瞼の照らすように光が差し込んでくる。

 思わず手を遮ろうとするが、体がだるくてすぐには動いてくれなかった。

「あっ、康生起きたの?」

「エ、ル……?」

 エルの声が聞こえたので、康生は光の眩しさに耐えながらもゆっくりと目を開ける。

「おはよう康生」

「お、おはよう……」

 目を開けると、顔をのぞき込むようにエルが見ていたので康生は思わず目をそらしてしまう。

「ん?私の顔になにかついてる?」

「い、いや別に……」

 言えない。エルの顔を至近距離で見てたなんて言えなかった。

 代わりに誤魔化すように体を起こそうとするが、やはり手を動かそうとした時と同様で体がだるく動こうとはしなかった。

「あっ、駄目だよ。昨日の夜も騒いでたから今日一日は絶対に安静にしないと」

 そんな康生を見て、エルは慌てて康生の体を押さえる。

 その際にエルの体に触れ、康生は少しだけどきまぎしてしまう。

「み、皆はどうしてるんだ?」

 それを誤魔化すように康生はおとなしくベッドに横たわり、皆の様子を尋ねる。

「時雨とリナはまだ寝てるよ。上代琉生はどこにいるのか分からないけど、多分大丈夫だと思う。街の人達とリナの軍は今一緒に広場の片づけをしてる所」

 エルの言葉を聞いて、時雨さん達が寝ていることに康生は驚く。

 こういう時は率先して動くタイプの人なのに、と。

「あぁ、時雨達はね」

 すると康生が驚いていることを気づいたようにエルは笑いながら話す。

「宴会のあと、二人でずっと語り合ってたんだって。それで朝になってようやく二人は寝始めてみたいだから、二人は多分昼ぐらいまで起きないと思うよ」

 朝まで……。

 康生はあの二人はそんなにも仲がよかったっけ?と疑問に思いながら、二人がしっかり休んでくれていることを聞いて少しだけ安心する。

「あっ、そうだ今から朝食持ってくるね」

「ありがとうエル」

「別に気にしないで。康生は私なんかより一杯頑張ったんだから、そのお礼がしたいの」

「別にそんな……」

 と康生はすぐに否定しようとしたが、エルは康生の言葉も聞かずに言ってしまう。

「……なんだかいつもと違って元気だな」

 エルの後を見送りながら康生はそんなことを呟いたのだった。




「上王様!準備完了致しました!」

「うむ。ご苦労」

 薄暗い室内で、一人の少女が報告を受けて豪華な椅子から立ち上がる。

「ようやくお会い出来るわ」

 立ち上がった少女はそう言って、うっすらと笑みを浮かべたのだった。

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