第226話 康生の休息
「うっ……ここは……?」
真っ白なベッドの上。そこで康生は目覚めた。
目を開けるとまず天井が見え、視線をずらしていくと、どうやらここは医療所にある入院室だということに気がついた。
(……そうか。俺はあの時倒れて…………)
自分が倒れる寸前のことを思い出す康生。
『解放』の力を使い、隊長達を倒していった。しかしあと一人。剣の隊長を倒す寸前の一歩で康生は魔力切れにより倒れてしまった。
いや、魔力切れだけではない。康生は自身の体が『解放』という力の負荷によりボロボロになったことを知っている。
あの力は魔力をエンジンの燃料として使って超加速をおこす技。だが超加速をすれば人の体なんてものは一瞬のうちにつぶれてしまう。だから同時に体を守るように力を使う。
それにより魔力の消費量や、風の力の消費量も莫大なものとなり、さらには完全には負荷を消しきれずにこうしてすぐに倒れてしまったのだ。
「っ!そうだ皆はっ!?」
そこまで思い出した康生は、自分が倒れたあとにどうなったのかが気がかりになり慌てて体を起こそうとする。
「うっ……」
しかし体は思ったように動こうとはせずに、ただ手をばたばたさせるだけだった。
『それが力を使った反動ですよご主人様』
ふとそんなとき、ベッドの横に置いてあったスマホから聞き慣れた声が聞こえた。
『あの力はそれだけ強大なものだと警告したはずです。すべてを使い果たす前にやめなければご主人様の身を滅ぼします。幸い今回は魔力の方が先になくなったおかげで多少助かりましたが……』
「……あの時は仕方がなかったんだよ」
康生自身も、AIに言われるまでもなく『解放』の力が強大なものだと分かっていた。だからこそ力は使わずに勝とうとした。でもダメだった。
「俺にもっと力があれば……」
だから康生はひたすらに悔やむ。十年間という時間、ひたすら自らを高め続けていた自分自身を。何故もっと力を付けなかったのかと。
『あの時、ご主人様が修行を終え、地上に出たのは正解です。そうでないとご主人様は恐らく今ここにいませんですから』
だがAIは康生を慰めるわけでもなく、淡々と事実を述べる。
康生もそれは分かっている。だからこそ今の感情をどこに向ければいいか分からずにいるのだ。
コンコンコン。
そんな時、病室の扉がノックされた。
「は、はいっ」
慌てて返事を返すと、扉は勢いよく開かれる。
「康生っ!」
するとエルが大きな声を出して入ってくる。
「こら、病人の前だから静かにしないと」
「そうですよお嬢様」
そうしてエルの後に続き時雨さんと翼の女も入ってきた。
「やっと目を覚ましましたか英雄様」
そして最後に上代琉生までもがやってきたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます