第224話 エルの休息

「はぁ……今日は疲れたな」

 街中を一人を歩くエル。

 その表情は言葉とは裏腹に少しだけ生き生きしているように見えた。

(今日の戦いは人と私たちが初めて一緒に戦ったんだ。今日の戦いのおかげでまた皆の交流も深めることもできた。これでまた一歩夢に近づくことが出来たんだ)

 始めは康生一人に負担を掛けてしまったこの戦いに負い目を感じてはいたが、魔力切れ以外目立った外傷がないことを知ったエルはとりあえず一安心した。

 そして皆に休むように言ったエルもまた、一人休暇を楽しんでいた。

(今日は皆疲れるだろうな。皆あんなにも頑張ったんだもん……)

 そう思うと同時に、エルの中に少しだけ暗い感情がわき上がる。

 康生達の頑張りがすごいと認めれば認めるほど、自分の存在がいかにちっぽけなものだと、エルは思っているのだ。

 チラリと町中を見渡せば、街の人達は皆駆け足が走り回っている。

 皆、今日戦ってくれた皆のために宴を開こうと準備をしてくれているのだ。

 それでも先ほどから街を歩くたびに、街の人々からお礼を言われる。

 本当ならばそのお礼は自分が受けるべきではないと考えているエルだったが、ここは無用な心配事は掛けたくないので、笑って答える。

「皆すごいな……」

 兵士達も、街の人達も、時雨達、そして康生。

 今日のことは皆が助け合ったからこそ勝つことが出来た。

 そしてエルは考える。今日、私はどれだけ協力することが出来たのかと。どれだけの手助けをすることが出来たのかを。

 エルが言えるのは傷を癒す。それだけだった。

 本人はそれさえも、その程度のことと思っているのだった。

「っと!いけない、いけないっ!」

 色んな事を考えていたエルだったが、瞬時に首を振って考えを中断させる。

「今日は皆に休むように言ったんだった。だから私もうじうじ考えないで休まないと」

 休むように言った本人が、休息をとってないのでは示しがつかないということで、エルは宣言通りに休息をとることに。

「でも……」

(休むって具体的にはどうしたらいいんだろう……)

 まだこの地下都市に来て日も浅いエルは、人間界での休息の仕方を知らなかった。

 かといって、他の人達の所に行けば邪魔をしてしまう。

 だから結局は一人で休息をとる他なかったのだ。

「――そうだっ」

 そんな時、どうやって休息を考えていたエルはある案を思いつき、早速足場やに街を歩いていったのだった。

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