第221話 休息
「――これで終わったの?」
隊長達が立ち去るのを見送ったエルは一息をつくようにして呟く。
「ひとまずこの戦闘は終わりました」
エルの言葉に翼の女は短く返す。
エル達の背後には今回の戦いで戦ってくれた兵士達が立っている。
皆、エルの願いの通り誰一人殺さず勝ち抜いてきた。そのことについてエルはとても感謝をしている。
兵士一人一人は戦いに勝利し、歓喜の表情を浮かべていた。
だが、エル達は違った。
というか上代琉生と、翼の女だけが唯一戦闘に勝ってなお、表情を曇らせていたのだから。
「――これからのことをどう見る?」
そんな中、翼の女が上代琉生へと尋ねる。
「これから、ですか。恐らく敵は全戦力を使ってここを攻めてこようとするでしょう」
「やはりそうだろうな」
「そして、それを見越して異世界人達が戦闘を仕掛ける。そうしてまた異世界人と人間の大きな戦いが起こる」
「…………」
どうやら翼の女もそこまで考えがいたらなかったようで、驚愕の表情を浮かべる。
対する上代琉生はどこか寂しがっているような、そんな表情を浮かべていた。
「――康生大丈夫かな?」
そんな時、エルが心配したように呟いた。
「あぁ、康生のことだからきっと大丈夫だろう」
エルの心配を和らげるように、時雨さんが優しく微笑んだ。
「康生は単なる魔力切れのせいで気絶しているだけだ。だからきっとすぐに目をさますだろう」
そして翼の女もまた、エルを励ますように言葉を続けた。
「しかし、あの力……。一体あの体にどれほどの力を隠しているというのか……」
翼の女は康生が使った『解放』という力を思い出して、少し身震いする。
「今回の戦いで、その力が向こうに知られた。だからこそ当然、向こうは全力でくるでしょうね」
「だろうな……」
康生の力を目撃したからこそ、上代琉生や翼の女はその力の様々な驚異を思い浮かべ畏怖する。
「――皆、私のお願いを聞いてほしいの」
だがそんな中、エルが時雨さん達を真剣な表情で見つめる。
「どうしましたお嬢様?」
急に真剣な空気を出したエルに対して、翼の女は少しだけ身構える。
「この戦いはとりあえずは終わった。だから――皆は最低でも今日一日は絶対に休んで!」
その言葉にその場の一同は呆けたようにエルを見た。
「どうせ皆はこれから何かやろうとしてるんでしょ?でもそれはダメ!いくらこれから先も危険だからっていっても、今日ぐらいは絶対に休んで。じゃないと体が持たない!」
そんなエルの言葉で、時雨さん達は強制的に休むことになった。
その中で、翼の女と上代琉生だけが苦笑いを浮かべていたので、どうやらエルの想像通りだったことが伺えた。
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