第211話 爆発的

「さぁ!どうした!解放という力はその程度なのかっ!?」

「くっ!」

 槍と剣の攻撃を避けながら、遠方からの攻撃も回避する。

 そんな全神経を使う戦闘は、かれこれ数分も続いていた。

 斧の男を倒した所まではよかったが、やはり康生の予想通り、それ以降は誰一人として全く隙を見せてこない。

 それに先ほどから剣の男が言う「解放」の力。

 実はまだそれは発動していない。

 あれは相当に燃費が悪いもので、今の康生の魔力では恐らく一秒たりとも、もたないのだ。

 だからこそ康生は自身で作成した武装解除と、魔法を節約しながら、あらゆる道具の機能を使ってここまで堪え忍んできた。

(……時雨さん達は大丈夫だろうか)

 そんな戦闘に際しても康生は時折、隊長一人と戦っているであろう時雨さんの心配をする。

 当然、そんな心配をすればわずかだが気が抜け、敵に隙を見せてしまうのだが。

「もうその手にはのらないよ」

 剣の男は、康生の隙を決してチャンスだと思わずに、同じような攻撃を繰り出す。

 いくら斧の男のように、隙を見せるよう誘導しても、対策をされているのだから、この状況を一向に変えることが出来ずにいる。

(せめてこの攻撃から逃げられれば……)

 剣と槍の攻撃の範囲外に出ることが出来れば、今度は遠距離の敵から倒していける。

 現段階では、集中力をそぐ原因となる遠距離攻撃をまずは撃破することが最優先なのだが、隊長達はそれを当然分かっているようで、全く逃げる隙を与えてくれない。

「さぁ、いい加減疲れてきただろ?反撃に出てきてもいいんだぞ?」

 剣の男はより一層攻撃の手を強めながら話しかけてくる。

「その手にはのりませんよ」

 こちら攻撃を仕掛けてしまえば、すぐに一人が防ぎ、すぐに他の人が康生に向けて攻撃を仕掛けてくる。

 そんなことは分かりきっているので、康生は結局この状況を打破することが出来ずにいた。

「ふんっ、ならばさっさと諦めろっ!」

 それに槍の男が反応してくる。

(諦めるわけには…………)

 とそこまで言い掛けた康生だったが、その瞬間にとある案を思いつく。

 そしてすぐに自身の装備や魔力残量、風の力などを頭の中で計算する。

(――これならいけるかも)

 この状況を突破できる作戦を思いついた康生は早速行動に移す。

「分かりました。じゃあ諦めますよ」

「何っ?」

 康生の言葉に真っ先に反応したのは剣の男だ。

 剣の男はその攻撃の手をわずかながらに鈍らせた。

「はっ!ようやく諦めたかっ!」

 しかし槍の男は、そんな康生の態度にチャンスと言うばかりに攻撃を仕掛けてくる。


「――今だっ」


 康生が叫んだ瞬間、康生を中心として爆発的な突風が吹き荒れる。

「なっ!」

 見ると剣の男は咄嗟に退避をしたようで、風の影響を受けている様子は無かった。

 しかし槍の男は確実に風に捕らわれており、その体は宙に浮かんでいる。

 だからこそ康生はその一瞬で、槍の男を地面に叩きつける。

「…………」

 そうすることで槍の男の意識を奪う。

「まだそんな力が……。しかし今のでもう君の力は使い果たしてしまったようだね?」

 今にも倒せそうな康生の姿を見て、剣の男は一人笑ったのだった。

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