第207話 風
「くそっ!雑魚がいきがってんじゃねえよっ!」
どうやら爪の男は攻撃を食らったことが相当頭にきたらしく、その表情にはわずかながら血管が浮き出ていた。
「こっちは楽に殺せるから来たのによぉ、どうしてこんな目に遭わなきゃいけねぇんだよっ」
それから爪の男はぶつぶつと文句を言い始める。
時雨さんと翼の女は攻撃をしようかと悩みながらも、攻撃の姿勢を整える。
本来ならば、この隙に行くべきなのだが二人とも、敵の様子が少しおかしいことに不安を抱いているようだった。
「あぁー、もう知らね。こっからは本気でぶち殺してやるっ!」
二人の不安通り、爪の男はその手を鎧にあて、叫ぶ。
「武装解除っ!」
瞬間、爪の男の鎧が淡い光に包まれる。
全地下都市直属部隊の隊長となるような男であれば、どんな性能の武装機械を持っているか、時雨さんには想像も出来なかった。
だからこそ、二人はじりじりと移動しながら爪の男の様子を伺う。
「死ねっ!」
瞬間、爪の男が両手を広げて攻撃してくる。
しかしその爪の長さでは、時雨さん達に攻撃は届かない。
それなのに一体どうして……。
「ぐっ!」
警戒していた時雨さんの元に攻撃が届く。
時雨さんは瞬時で武器でガードし、なんとか身を守る。
「どうした時雨っ!」
「気をつけろ!奴の攻撃は飛んでくるぞっ!」
「何っ!?」
時雨さんが叫ぶと同時に、爪の男は再度その武器で攻撃を加える。
今度は翼の女へと向けられたその攻撃は、一直線に翼の女へと向かっていき、
「くそっ!」
時雨さんと同様に、翼の女もぎりぎりの所で攻撃を防ぐ。
「なるほどな。要するに斬れる風を飛ばしているということか」
爪の男の攻撃を防いだことで、翼の女は攻撃の分析を始める。
その間にも、爪の男はさらなる攻撃を仕掛けてくるが、二人はそれぞれの武器で防ぐ。
「確かに驚異といえば驚異だが、この程度なんてこともない!」
完全に敵の攻撃を見切った翼の女は隙を狙って敵の懐まで移動する。
そして雷を纏わせた剣をそのまま爪の男に突き刺そうとするが、
「甘いな」
「なっ!?」
爪の男に近づいた翼の女は瞬時にずたずたに切り裂かれる。
寸前の所で後方に下がった翼の女だったが、それでもあちこちに切り傷が刻まれていた。
「奴め、自分の周りに風の刃を纏わせている……」
どうやら、適当に攻撃しているだろうと思われた敵の攻撃は、自分の周りに風の刃で出来たシールドを作るためだったようだ。
「となると迂闊に近づけないか……」
止むことのない攻撃を防ぎながら、時雨さんは翼の女の元へと移動する。
「この状況どうする?」
時雨さんが翼の女に訪ねたが、翼の女はしばらく熟考するように考えていた。
「少し時間をくれ」
そう言うと翼の女は敵から一旦距離を置いた。
「了解した」
そうして退避する翼の女を守るように、時雨さんが前に出たのだった。
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