第204話 嘲笑う

「さぁ!どうしたのですっ!」

 五人全員、武装解除をした隊長達の猛攻撃が康生を襲う。

 今まででさえぎりぎりで回避していた攻撃が、すでにすれすれの間一髪の所で回避している状態になった。

 さらには遠方からは常に銃と鎖で攻撃をされており、近距離と遠距離両方に気を配らないといけないので、康生の身体に相当な負荷を負わせる。

「まだだ……まだ……!」

 しかしひたすら回避を続ける康生の目は決して諦めてはいなかった。

 小さく呟きながらじっとチャンスを伺う。

 この状況を打破できる状況がくるのを。

 そのために必死に力をためていることを悟られないように。

「くそがっ!死ねやっ!」

 そんな時、とうとう避けられ続けることに嫌気がさしたのか、斧の男が大振りの攻撃を仕掛けてくる。

 瞬時に回避を取ろうとする康生だったが、それを防ぐように皆がそれぞれの位置に陣取る。

 まさに逃げ場がないそんな状況。

(……きた!)

 しかし康生はその状況こそ、この状態を打破できるチャンスと見出し、グローブを構えた。

「『雷鳴腕(ボルティック)』」

 腕に雷の力を加えることで、より速くスピードを得る。

「『爆裂炎(エンテイ)』」

 すぐさま次の発動コードを読み上げる。

 それによりグローブに触れれば爆発する魔法を発動させる。

「『加速(ブースト)』」

 次は風の力を使うことで、瞬間的な加速を行う。

「『土腕(ソルド)』」

 最後にグローブを土で覆い強度を高め、さらに『爆裂炎(エンテイ)』と併用することで、殴った際に小さな土の塊が飛び散る仕組みを入れる。

 以上の四つを使い、康生はそのわずかなチャンスを狙って、斧の男に拳を突き立てる。

「ぐはっ!!」

 拳が鎧に当たると同時に破裂音が炸裂する。

 そして瞬時に辺り一面、全方位に向かって土の塊が飛び散る。

 康生は寸前の所で回避を取り、『加速(ブースト)』を使用したまま斧の男を盾にするよう退避する。

「はぁ……はぁ……」

 土の塊が散り終わると同時に、斧の男はその場に倒れ込む。

 それを見ながら康生は肩でを息をしながら、すぐに体勢を整えようとし、瞬時に次の作戦を考える。

(斧の男の鎧は前回の攻撃でたまたまヒビが入っていたから一撃でやれた。でも、一度使った手が他の奴らに通用するかどうかも分からない……)

 康生は一人一人やっていこうと考えているようだったが、一人倒すだけで相当の体力を使っているようだった。

「なるほど一人ずつ倒していく考えですか」

 まるで康生の疲労を嘲笑うように、そしてその手にはのらせない、というように剣の男は言う。

「しかしそれではあなたは私たちを倒せませんよ?」

 剣の男の言葉が言い終わると同時に、再度康生に向かって攻撃が降り注ぐのだった。

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