第203話 解放

「ぐはっ!」

 咄嗟に『大地の鎧(アースアーマー)を発動させた康生だったが、剣の男の攻撃の方がわずかに早かったため、完全に発動させることができなかった。

 しかし軽傷に抑えることが出来たことが幸いし、すぐに体勢を立て直すことが出来たので、瞬時に敵と距離を置く。

「やはり普通の太刀筋では破れないか」

 康生に攻撃を防がれた剣の男だったが、それでも悔しがるというような感情は一切見せることはなく、冷静に康生のことを分析する。

 また、ほかの仲間もすぐに攻撃に移れるように瞬時に場所をとりはじめたので康生にとっては休む暇すらない。

「――これはやはり武装解除をするしかないか」

 そんな康生を見て、剣の男が小さく呟く。

「あぁ、賛成だ。俺はちょっと使っちまったが、まだ十分に発動出来るぜ」

「私もまだ全然大丈夫だ」

 先に康生との戦いで、武装解除を発動させていた斧と槍の男だったが、わずかの時間だけだっため、まだ十分に戦えるだけの武装解除をするだけのエネルギーが残っているようだった。

「武装解除か……」

 正直、斧と槍の男でそれぞれの鎧の性能がけた外れに上がることは分かっている。

 パワーだけでなく、スピードも同様に上がるため、今のままでは確実にやられてしまう。

「じゃあ俺もそろそろ解放させましょう……」

 隊長達が次々に武装解除をする中、康生は一人集中しながら深く深呼吸をする。

「あぁん?お前はもうしてるんじゃねえのかよ?」

 それを見た斧の男は康生に疑問をぶつけてきた。

 そう、康生は斧と槍の男との戦いですでに武装解除をしており、今もなお康生は淡い光を纏っている。

「――解放、といったね?」

 だが剣の男は康生の言ったことを聞き逃さなかったようで、それが武装解除とは違うものを表してあることを瞬時に読みとった。

「どんなものなのかは戦ったら分かりますよ」

 これ以上会話をしていると、敵に情報を渡しかねないと判断した康生はすぐに戦闘体勢をとる。

 その体は、武装解除の時と同様に淡い光を纏っているだけで一見なんの変化もなかった。

「へっ!じゃあやってやろうじゃねぇか!」

「あぁ、やってやろう!」

「分かりました」

 それぞれ武装解除が終わった隊長達は、また先ほどと同じように一斉に飛びかかってきた。

 いや、先ほどと同じようにといったが、その実隊長達のスピードはめまぐるしくあがっていた。

 康生が風の力を使って行う、加速のスピードと同じかそれ以上の速さで飛び込んでき、さらにはその武器をふるう。

「はっ!」

「くっ!」

 剣の男に至っては、もはや神速の域に達しているようなもので、その太刀筋を視認することは容易ではなかった。

「そろそろ解放の力を見せてもらいましょうか!」

 寸前のところで避け続ける康生を見て剣の男は初めて、その表情に笑みを浮かべたのだった。

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