第202話 フォーメーション
「フォーメーションはいつものように行く。相手は子供だが決して手加減はしないように」
剣を構えた男は、それぞれの隊長に指示を飛ばした。
指示を聞いた隊長達はそれぞれの武器を構えたまま、それぞれの位置に移動する。
剣の男を中心にそれぞれ左右に、斧の男と槍の男、反対側には鎖の男と銃を持った男が並ぶ。
皆一様に、攻撃のチャンスを狙っているので、最初の時と違い、本気でかかってくることが嫌でも分かる。
「すー」
それぞれ敵五人を視界に入れながら、康生は一度深呼吸をする。
斧と槍の男と戦っただけでも大変だったのに、それが五人一斉にくるということは、どれだけの戦闘になるかを康生は考える。
その上で確実に勝てるという確証を得ることが出来ないので、ただただ集中力を高める。
「それでは行かせてもらうよっ!」
その言葉が合図と共に、前、左右から同時に隊長達が攻めてくる。
前衛である剣の男と斧の男、そして槍の男がまず仕掛けてくる。
残りの銃と鎖の男はどうやら後方から攻撃のチャンスを伺っているようだ。
これでは三人の相手をしているうちに一切隙を見せるわけにはいかないという緊張感が走る。
「とにかく相手のペースに乗せられてはだめだ……!」
三人同時の攻撃を食らえば必然的に防戦一方になってしまい、いずれは隙を作ってしまう。
だからこそ、こういう場合は相手の意表をつかなければならない。
そして今回でのその方法とは……、
「はっ!」
足に思い切り力を入れ、同時に風の力を解放し康生は空に飛ぶ。
意表をつくために、少なくとも前衛の者達が攻撃をしかけることが出来ないように、空中に逃げる。
これで少しはペースを乱すことが出来たはずだ。と康生は考える。
しかし、
「甘い」
銃の男は短く言葉を言うと同時に、銃を発砲してくる。
「くそっ!」
一発一発に威力があるとはいえないが、その分敵の銃は連射が可能のようで休み暇なく撃ってくる。
「あらよっと!」
一度敵の視線から逃れようとすぐに方向転換をしようとした康生だったが、どうやらその一瞬の隙を見て、鎖の男が空中に向かってその武器を放つ。
「なっ!」
一気に加速して方向を変えようとしていたので、康生はその攻撃にすぐに対応することが出来なかった。
そのせいで、鎖は敵の狙い通り康生の足にからみつき、敵に捕まってしまう。
「このまま地面に戻ってきなっ!」
鎖の男は康生を捕まえたまま、その鎖を思いっきり引っ張る。
「チャンス」
一直線に地面に引っ張られる康生に向かって、銃の男は機会を伺っていたかのように一気に弾を撃ってくる。
「くそっ!シールド展開!」
鎖から逃れることが出来ずにいた康生は、銃を防ぐために咄嗟に自身の周りに風のシールドを作る。
「……くそ」
連射用の弾では康生のシールドを壊せないと思った銃の男はすぐに弾を変えようとしていた。
(不味いっ!)
どんな威力で飛んでくるか分からないが、直感的に避けなければ不味いと思い、すぐに回避行動を取ろうとする。
しかし、
「こちらを忘れてもらっては困るな」
鎖に引っ張られていたこともあり、康生の体はすでに地上に近くなっていた。
そのせいで、剣の男の一度の跳躍で康生を射程に捉える。
「くそっ!」
迫ってくる剣を見ながら康生はすぐに防御の体勢をとった。
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