第201話 作戦
『こちらに直属部隊の隊長が一人来たっ!』
「えっ!?」
時雨さんからの無線を聞き、康生は思わず声をあげる。
「なんだとっ!?」
そして隣では、翼の女も声をあげていた。
「おや。どうやらすでにそちらに到着したようですね」
康生と翼の女の動揺から内容を察したのか、剣の男は表情を緩めて言った。
その反応をみるからに、どうやら向こうの戦場に隊長がいるのは敵の作戦だったようだ。
「いくら死なないからといっても、所詮は雑魚の集まり。だったらてっとり早く終わらせようと思いまして、一人ほど仲間を行かせておきました」
「貴様っ!」
どうやら想像通り、これは敵の作戦だったようだ。
向こうには時雨さん達がいる。
恐らく隊長の実力はここにいる者達と同等程度だろう。
そんな敵相手に果たして殺さずにやって戦うことが出来るのだろうか。
康生は不安にかられる。
出来ることなら今すぐにでも飛んでいきたいと思うほどに。
「おっと、逃げるなら覚悟してくださいね?私達はあなた達を追って向こうまで行きますから。まぁ、その際にあなたたちの仲間が何人死ぬかは分かりませんが」
康生の考えを読みとったのか、剣の男は意地の悪い提案をしてくる。
これで康生達はここから逃げることは出来なくなった。
「――お願いです」
この状況をどうすることも出来ないと悟った康生はとある提案をする。
視線を隊長達からずらし、翼の女の方を向く。
「ここは俺一人に任せて、向こうに加勢しにいってください」
「なっ!?何を言ってる!貴様一人で五人を相手取るつもりか!?」
当然康生の提案に翼の女は反対する。
二人相手でも苦戦していたのに、その上五人と戦うとなると、とても康生一人では勝てないと翼の女は考えたのだろう。
しかし、
「どのみち、このままでは時雨さんもエルも、それに兵士の皆さんが危険です。でもここで向かえばなんとかくい止めれるはずです」
「それはっ……」
確かに翼の女が援軍に行けば、なんとかなる可能性がある。
しかしそれはつまり康生を一人で残していき、危険にさらすということだ。
そんな真似はとうてい翼の女には出来ない。
「お願いです。エルのために行ってあげてください!」
しかし康生は必死にお願いする。
このままだと時雨さん達が危険だから。自分よりも時雨さん達が怪我をする方がよっぽどつらいから。
「…………くそっ!」
翼の女も康生も勢いに負け、小さく舌打ちをした後に後を振り返る。
「絶対に死ぬなよ」
「分かってます」
最後に短く言葉を交わし、翼の女は空に飛び立った。
「――さて。それじゃあもう始めていいかな?」
翼の女が飛び去るのを見送った剣の男は康生に尋ねる。
まるで、翼の女がなくなるのを待っていたかのように。
「はい。大丈夫です。本気でいくので全員まとめてかかってきてください!」
挑発にのるかのように、康生は力強く拳を構えたのだった。
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