第193話 銃弾

「あそこだな」

「そうみたいですね」

 空を飛びながら、康生と翼の女は目的の場所を目指す。

 そうして進む先に軽く認識が阻害されるような模様をしたテントを見つける。

 翼の女が発信を見ると、ちょうどその位置に信号があったので間違いなく、そこに敵主力がいるのだろう。

「どうする?一気に殲滅するか?」

「いえ。まずは話し合いましょう。もしかしたら話し合いで解決するかもしれません」

「ふっ甘いことをっ!」

 康生の言うことに賛同しかねていない翼の女だが、それはエルの願いでもあるため、今回は素直に従うようだ。

 それともたとえ不意打ちでなくとも、正面からでも余裕に殲滅することが出来る自信でもあるのか、とにかく二人はテントの前に降り立った。

「――久しぶりだな、裏切り者」

 地上に降り立つと同時に一人の女が康生達を出迎える。

「都長さん……」

 その姿を見て、康生は苦い顔を浮かべる。

 あの時味方だと思っていた都長さんとこうして敵対しているということに、今更ながら尻込みしているようだった。

「貴様が敵の頭でいいんだな?」

 そんな康生を横目に、翼の女はあくまでも強気に前へと出る。

「いかにもそうだ。私がこの作戦での全指揮権を持っている」

 やはり今回の戦いは都長が仕掛けてきたものだと康生は知る。

 しかし同時に、都長の周りに見慣れない兵士がいることに気づき、警戒する。

「それじゃあ早速用件だけ伝えるぞ」

 他とは違う鎧を纏う兵士達を、しかし翼の女は全く気にも止めない様子でしゃべる。

「我々の要求は即刻ここから立ち去ってもらうこと。まぁ、本来ならば二度と戦いを仕掛けてこないよう……などと言わねばならないが、今はいい。とにかくここから去れ。それが我々からの要求だ」

 話し合うことに乗り気ではなかったが翼の女だったが、それでもやはり異世界人達を率いる指揮官ということもあり、話し方はとても堂々としている。

 しかしそれが逆に敵の反感を買うことは想像に難しくなかった。

「化け物風情が!貴様等なんぞに命令される筋合いはない!」

 当然のように都長は翼の女の要求を突っぱねた。

 やはりこの戦いで、話し合いで解決するなど無理な話だったのだろうか。

「お、お願いです!僕達には戦う理由なんてないんです!だからどうかこの場は引いて下さい!」

 しかしそれでも康生は諦めきれずに頼む。

「人間の皮を被った化け物が!貴様なんかと話すことは何もない!貴様らこそ大人しく命を差し出せ!」

 だがやはり都長はそっけなく要求をける。

「そ、そこをなんとかっ!」

 しかしそれでも康生は諦めない。

 戦っては駄目だ。エルとの夢のためなら、少しでも戦うことを減らさなければならない。

 そのために康生は必死になって頼むが。


「康生っ!」


 しかしそんな康生の額に向かって銃弾が放たれ、完全に話し合いの場はなくなった。

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