第191話 媚び
「都長様!お客様です!」
「客?」
現在、康生達がいる地下都市を攻め込んでいる都長の元へ一人の兵士がやってくる。
「はい。なんでも今我々が向かっている先の都長を名乗っておりまして……」
「……都長?あぁ、なるほどな。すぐに通せ」
都長は兵士に命じて通すように言う。
現在都長がいる場所は、戦場にしている場所から少し離れたところにいる。
その場所は現在戦場にしている場所から正反対の場所であり、地下都市への入り口がない場所でもある。
敵主力もそこに集結しており、いつでも攻撃に向かうための移動手段も用意してあった。
康生達がいくら探しても見つからなかったのはそういうわけということだ。
「おい!新たな作戦内容が書かれた書を持ってきたぞ!」
そんな都長を初めとした、主力部隊がいる中へ元都長が入ってくる。
「――発言を慎め。今のお前は都長ではない」
「ぐっ……」
確かに現在の立場は元都長であり、普通の一般市民である。
康生達に対しての失態があったこそだったが、こうして今回で情報を流すことで元の地位に戻ることを約束されているが、今はまだただの一般人でしかないのだ。
「わ、分かっておる!」
「そうか。じゃあ早くその作戦書とやらを見せろ」
元都長は悔しそうに表情を歪めながら、都長に作戦書を渡す。
「なるほど……主な変更点はなしか」
受け取った作戦書を都長はしばらく眺める。
それは事前に聞いていた内容とあまり変更はないようだった。
「――それじゃあ俺たちの出番はないってことか?」
そんな都長の元に一人の男が近づいてくる。
「そうです。元々これは我々の地下都市での問題。本来は我々だけで解決しなければいけない問題ですので」
男に対して、都長は上辺の笑顔を張り付けて答える。
「ふっ、元々はお前達で奴らを逃がしたのが原因だろうが。お前達だけではどうしようもないからこうして軍を派遣してあげたものを」
「そっ、それは……!」
しかしすぐに都長は表情を固くする。
失敗をしたのは都長であり、こうして助けてもらっている以上、何も言い返すことができない。
そんな様子を元都長はじっと見つめる。
「やはり、全地下都市直属の部隊様はすごいです!短時間でここまでの兵力を用意できるとは!」
「ふっ。お前に何を言われても何も嬉しくないわ。――ただ、我々の仲間が子供一人にやられたと聞き以前から気になっていただけだ」
媚びを売ろうとした元都長だったが、軽くあしらわれてしまい苦笑いを浮かべる。
そんな時、
「大変です!こちらに向かって敵主力が近づいております!」
突然兵士の一人が叫んだのだった。
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