第171話 方法

「――大変な事になったな」

 上代琉生から概ねの話を聞き、時雨さんがため息を吐く。

「よし、これから作戦会議を開こう。あなたも勿論来てくれますよね?」

「あぁ、別に構わないさ。少なくともこの街での借りは変えさせてもらいたいからな」

「あっ、じゃあ俺もついて行きますよ」

 という感じで時雨さん、翼の女、上代琉生は部屋を後にした。

 初め康生も行こうとしていたが、エルに安静にしているよう止められ、結局エルの監視は続行することになった。

「……俺も話し合いに参加したかったんだけどな」

 三人が部屋を出ると康生は未練がましく呟く。

「そんな事言ったってダメです。康生は今安静にしてないといけないんだから」

 でもエルがいるから抜け出そうにも抜け出せずにいる。

「それに、話し合いの内容はAIさんが記録してくれているんでしょ?」

『はい。勿論です』

 エルの問いかけにAIは答える。

 康生が会議に参加出来ないのでAIが会議の内容を記録してくれることになった。

 さらには意見も出してくれるという事なので、これ以上ない安心はあるのだが……。

「それでもなー……」

 何も出来ない今の現状が康生にとってはとにかく悔しい。

「康生は今は休む事だけ考えればいいの。休まないと結局すぐに倒れるんだから。今は休んで魔力を補充しないと」

 そんな康生をエルは子供をあやすように何度も言い聞かせる。

『……そういえば』

 とそんな時にAIが何かを思い出したように呟く。

『昨日、異世界人の皆様に魔法について教えてもらった時に魔力について言っていた事があるのですが……』

「魔力について?そんな事言ってたっけ?」

 AIが言うので康生は記憶を掘り起こしてみるが、やはりそんな記憶はなかった。

『きっとご主人様は魔法を使う事だけに集中してたのでしょう。だからこそ私はしっかりそっちのデータも集めたのですが』

 やはりAIは優秀だと、康生は改めて感じた。

「それで一体何が気になっているんだ?」

『はい。それが昨日、異世界人の方が魔力は他人から貰うことで回復する方法もあるという事を言っていましたので。この状況の中ですので、エル様から魔力を貰うなりして回復した方がいいのではないかと』

 魔力を他人から貰う?そんな話は康生は聞いた覚えがなかったが、AIが聞いたというのならばそれは事実だろう。

 そして魔力が回復するというのなら、康生はその手にならないことはなかった。

「エル!じゃあ早速魔力を貰ってもいいか!」

 飛び起きるようにしてエルの肩を掴む康生。

「……エル?」

 しかしエルの顔はどこか赤く染まっており、康生と目を合わせようとしていなかった。

 そんな態度に不審になりながらも魔力を貰うよう頼む康生。

「…………確かに魔力をあげる方法はあるんだけど……」

 言いよどむエル。

「どうやってやるんだよ?」

 言葉を詰まらせるエルだったが、康生は問いつめるように訪ねる。

「そ、その…………」

「その?」

 そうしている間にもエルの顔はみるみると赤くなっていく。

 とても言いにくいことなのか。それでもしばらくするとエルは何かを決心したかのように口を開く。


「キ、キスをするの!」


 と真っ赤に顔を染め上げてエルは言ったのだった。

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