第141話 させません

「貴様らっ!」

 兵士の中で康生達を支持する声が広がっていく中、隊長達はすぐさま剣を振り上げる。

「我々人類を裏切るというのかっ!」

 一瞬、兵士達は隊長に威圧されて動きを止める。

「――皆さんっ!異世界人達と和解する道こそが人類のためだと思いませんかっ!」

 しかしすぐに康生が声をあげる。

 隊長の言葉を打ち消すように放たれた言葉は、すぐに兵士達の心にささる。

「お、俺はやってるぞ!」

「俺もだっ!」

「俺も康生さんについていくっ!」

 先ほど以上に声が響く。

「く、くそっ!貴様らっ!」

 隊長はすぐに鎮圧しようと剣を構える。

「させませんっ!」

 康生がすぐさま動き、その剣を止める。

 その隙をみてか、康生に敵対していた兵士が大量に康生達のそばに近寄る。

「俺はここで隊長達をくい止めますっ!だから皆さんはどうか、異世界人達と共に逃げて下さいっ!異世界人の皆さんもどうか我々に協力して下さいっ!これで逃げられる確率も大きくあがるはずですっ!」

 兵士と異世界人、両方に声をかける康生。

 兵士達はすぐに康生の指示に従い、異世界人達と共に行動を供にしようとする。

 しかしそんな急に言われた異世界人達は当然いい顔をしない。

 だが今まで康生が砲撃を殆ど防いでくれていた功績もあってか、表情を曇らせながらも黙って兵士達と共に移動を始める。

「裏切り者がっ!」

 隊長の一人が銃を構えて兵士を狙う。

「だからさせませんって!」

 引き金を引く前に康生は針を飛ばし手元を狂わせる。

 その隙に銃を奪い放り投げる。

「くそっ!」

 銃をとられた隊長は、銃を諦めて康生へと攻撃をする。

「はっ!」

 しかし康生のグローブによりあっさり弾き返される。

「…………ここは一旦引くぞ」

「どうしてだっ!?」

 隊長の一人が呟いた言葉に、別の隊長か反論する。

「現状、戦力差は圧倒的。しかも敵にはあの少年がいる。少年の力は十分に知っているだろ?」

「――――くそっ!」

 その説明に隊長は納得するように、それでいて納得できないように顔を歪める。

「なに、状況的に我々が撤退しても何ら不自然はない」

 それだけ言って、隊長達は残っている兵士と共に撤退を始める。

「とりあえず安心していいのか?」

 去っていく隊長達を見て、康生は一息ついた。

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