第138話 配下達

「よし、全軍すぐに撤退するっ!」

 翼の女を筆頭に、異世界人達の兵は撤退を始める。

「なお、我々と共にエルお嬢様とその配下達を連れて行くことにするっ!配下達はエルお嬢様が逃げる間、死ぬ気でサポートを行う!だから各自はエルお嬢様を守りつつも全力で後退せよっ!」

 その言葉に異世界人達は少しの戸惑いを見せたが、翼の女の威厳のたまものなのか、すぐに後退を始めた。

「さて、そのぐらいの仕事はしてくれるんだろうな?」

「期待に答えられるか分からないですけど、全力でやりますっ!」

 現在、前方と左右から兵士達が押し寄せてきている。

 だから異世界人達の兵士は後方に向かって下がる。

 その間、康生は異世界人達皆が逃げれる為、全力でサポートすることになった。

「左方は私がやろう。しかし前方と右方までは手が足りないからな」

「両方ですか……分かりました。やれるだけやってみます」

「やれるだけではなく、死ぬ気でやれ。それでお嬢様に怪我があったら私はお前を殺すからな」

「分かってます!」

 それだけ言って翼の女は左方の方へと移動する。

「もう……そんなに過保護にしなくてもいいのに……」

 そんな中、エルが何故か顔を赤らめて呟く。

「まぁ、エルは康生を死なせないためにも、絶対に怪我をしないようにしなければな」

「分かってるよ」

 こうして異世界人達と共同の作戦が始まった。

 時雨さんはエルのそばに付き、エルを守ることになった。

 時雨さん以外にも異世界人が何人かついたが、翼の女の命令通り、特に何もしてくることはなかった。

 そして康生はというと、エルに預けていた鞄をもらい、武装機械のエネルギー補給――つまり風の力を補給する。

 そうして遠方攻撃が得意な異世界人達に大砲が来たらすぐに打ち落とすようお願いをし、後はこちらに迫ってくる兵士達を迎え撃つ役をすることになった。

 しかし問題は敵の数、左方は翼の女が引きつけてくれているのでなんとかなるだろうが、康生は前方と右方を防がなくてはならない。

 今はまだ、砲撃しかこないが、いずれ兵士達が近くまで接近してくるだろう。

 その時、康生はどうしたらいいかまだ少し迷っていた。

 さっきまで味方だった兵士達に裏切られた形になったのだが、それでもだからといって攻撃してしまう事をためらってしまうほど、康生は優しかった。

「くそっ!」

 まるでそのもどかしさをぶつけるように、降り注ぐ大砲の玉を潰すのだった。

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