第137話 一緒に
「時雨さんっ!どういう事ですかっ!?」
康生はすぐさま時雨さんに声をかける。
「私も分からないっ!それに先ほどから無線が何も反応しないっ!」
どうやら時雨さんも何も話を聞いていなかったらしく、突然の総攻撃に戸惑っている様子だ。
とにかくここは合流した方がいいと考え、時雨さんとエルは康生の元へと急ぐ。
「康生っ!」
康生の元へと来たエルはすぐさま康生の傷を癒す。
「どうやら貴様らは裏切られたようだな」
「そんな事ないっ!」
しかしエルはすぐさま反論をする。
だが康生はここである事を思い出す。
「――そうだ。あの都長は……」
時雨さん達がいた地下都市の都長と同じことをしていた。
それは上代琉生が言っていたこと。本当の事かは分からないが、康生はどうしても上代琉生が嘘をついているようには思えなかった。
黙っているよう言われたが、康生はすぐにその事実を時雨さんとエルに教える。
「――そんな……」
「まさかあの人もだったとは……」
二人はそれぞれショックが隠せない様子だった。
それもそうだ。あの人は、あの都長とは違い、話が分かる人だったと康生自身も思っていたから。
しかし都長の本当の正体は今のこの結果が物語っている。
「我々は一時撤退をします。ここにいたらお嬢様まで死んでしまう。だからお嬢様だけでも私と一緒に来てくれませんか?」
翼の女は少し焦るように手を差し伸べる。
しかしそれをエルは取ることはなかった。
「私は康生達と一緒にいます。だからごめんなさい……」
「そうですか……」
先ほどまでの威圧的な態度はどこに行ったのか、翼の女は少し寂しそうに表情を染める。
「いやっ!待って下さいっ!」
しかしそれを康生が呼び止める。
「なんだ?」
翼の女がギロリと康生を睨む。
「――も、もしよかったら……俺達も一緒に連れて行って下さいっ!」
「なんだと?」
康生の発言にその場の誰もが驚く。
「正気か康生っ!?」
「康生達は命が狙われているのよっ!?」
時雨さんとエルが一斉に声をあげる。
それでも康生は意見を曲げようとはせずにじっと二人を見つめる。
「でも今生き残るにはそれしか方法がない。今戦ったらエルや時雨さんを守れる自信がない……。だからこの人達と一緒に行くのが今は最善の方法なんだ……」
「でも……」
それでもエルと時雨さんはまだ完全には納得できない様子だった。
それでも二人共、今この状況で生き残る術で一番いい方法だという事は分かったようだ。
「それでお願いできますか!」
再度、康生は頭を下げて翼の女に頼む。
「…………」
翼の女は、しばらく康生を見て黙る。
しかし今はじっくり考える時間がない事から、すぐに答えを出す。
「――貴様は我々の仲間かもしれない。その事も含めて一度じっくり調べたい。――まぁ、一匹人間も混じっているようだが構わない。それでお嬢様が帰ってくれるならばな」
「ありがとうございますっ!」
翼の女の返事を聞いて康生は大きく頭を下げた。
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