第133話 話し合い

「はっ!」

「うわっ!」

「せいっ!」

「ちょっ!」

 クレーターの中で二人の攻防が続きます。

 翼の女がひたすらに攻撃を繰り出し、それを康生は必死に避ける。ただその繰り返し。

 康生が一切、攻撃を仕掛けてこないことを知り翼の女は終始怒りを示す。

「どうしてっ、攻撃をっ、してこないっ!」

「それはっ、俺はっ、話し合いをっ、したいだけですからっ!」

 攻撃を必死に繰り出しながら、方や攻撃を必死に避けながら二人はしゃべる。

 一見康生が完全に避け切れているように見える。しかしそれはいつまでも続くわけではない。人は必ずいつかは疲れて、動きが遅くなる。

「そこだっ!」

「くそっ!」

 疲れのせいか、康生は足をつまづく。

 その隙を狙い翼の女は一気に刀を叩き入れる。

 一差しで康生の体を貫くだろうと思われた刀だったが、しかしその寸前で康生は空中へと飛ぶ。

「あ、危なかった……」

 そのまま少し距離を取って康生は着地する。

「いい加減、本気を出したらどうだ?」

 そんな康生に翼の女は怒りの声を投げかける。

 しかし康生の考えは変わらず攻撃を仕掛ける様子はない。

(どうする。このままだといずれ俺はやられてしまう)

 康生は必死に考える。この状況を打開する方法を。

「どうしても戦わないというんだな?」

「あぁ、俺はあなたと話し合いがしたい」

「じゃあ仕方ない。すぐに殺してやる」

 次の瞬間、翼の女の周りが発光する。

 一瞬なんなのか分からずにいた康生だったが、すぐにその光の正体に思い当たる。

「電気?」

「正確には雷だがなっ!」

 答えると同時に翼の女は雷が纏った刀を振り下ろす。

「なっ!」

 康生はすぐに避けることが出来たが、すぐに目の前に光景を口を開ける。

 翼の女が刀を振ったその一直線は、まるでレーザーでも通り過ぎたかのように焼け焦げた線が伸びていた。

「本気を出さないと死んでしまうぞ?」

 翼の女は薄く微笑む。

 康生は必死に考える。先ほどの攻撃を見てしまえば、簡単に避けることは出来なくなる。

 だとすれば、いずれすぐにやられてしまう。

 でもどうすれば?

 康生はただ異世界人達と協定を結び、和解をしたいだけ。

 でも意見があわない。いくら思いを言っても否定されるだけ。

(ん?否定されるだけ……?てことは話し合いはもうすでに出来ている?)

 ここである一つの案が康生の中で浮かぶ。

(そうかっ!それだったらいけるっ!)

 そう思った瞬間、康生は時雨さんに声をかける。

「時雨さんっ!俺のグローブを下さいっ!」

 避けるから邪魔だと、時雨さんに渡しておいたグローブを康生は貰おうとする。

「……いいのか?」

「大丈夫です!」

 時雨さんは一瞬、不安な表情になったが、すぐに康生の顔を見てグローブを投げた。

「ありがとうございます!」

 グローブを受け取った康生は拳にはめ、早速戦闘態勢をとる。

「ようやく戦う気になったか」

 それを見た翼の女は待っていたかのように、顔を紅潮させる。

「いや、俺はあなたとただ話し合いをするだけです」

 そうして、康生と翼の女の話し合いが始まった。

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