第132話 威圧感
「私がこの部隊の指揮官ですが?」
その声と共に翼の女が康生の目の前に降りてくる。
「お前はっ…………!」
「お久しぶりです。あの時は大変お世話になりました」
威圧感。とてつもない殺気が翼の女から溢れ、康生を襲う。
あの時感じたものよりもより強い威圧感に康生は思わず後ずさりそうになる。
「――あの時の続きがやっと出来ますね?」
一睨み。たったのそれだけで康生の全身に悪寒が走る。
それだけ翼の女は殺気を込めており、前回の戦いでは翼の女は本気ではなかった事を物語っているようだった。
「ま、待って!どうしてあなたが指揮官をしてるのっ!?」
そんな中、エルがクレーターの中に向かって叫ぶ。
「あぁ、そんな所にいらしたんですかお嬢様?この前の戯れ言はなかったことにしますから、早く家に帰りますよ?」
エルの姿を発見した翼の女はにっこりと微笑む。
笑みを向けられ、エルはぞっと背筋が凍る。
「エ、エルには手を出すな!」
視線を遮るように康生は翼の女の前に立つ。
「邪魔です」
「っ!!」
瞬間、康生はすぐさま後ろに飛び退く。
先ほど康生がいた場所には、白く薄い刃がまっすぐ伸びていた。
「い、いきなりかよ……」
康生は無事に避けることが出来たにも関わらず冷や汗をかく。
翼の女の剣の速さは以前の戦いでいやというほど分かっている。
事前情報は多少なりともあるにも関わらず康生はどうやって戦えばいいか悩んでいた。
「――相変わらず逃げ足だけはいいようですね」
まっすぐに伸ばした刀を再び体に戻した翼の女は、すぐさま次の攻撃に入る。
「ま、待ってくれ!俺はあなたと話し合いがしたい!」
康生は慌てて手あげて、戦う意志がない事を伝える。
しかし翼の女はそんな康生を人目見てすぐさま刀を振る。
「はっ!」
かけ声と共に放たれた斬撃は康生の体に掠りもしなかった。
しかしあまりにも速い斬撃だったので、康生は思わず後ろに倒れるように攻撃を交わしていた。
「……危なかった」
康生は後ろに倒れてから、初めて自分が危ない状況に陥っていたことを実感する。
後ろに倒れた視線の先、つまり康生が立っていた背後には、恐らく先ほどの斬撃で出来たあろう穴があった。
「――これが飛ぶ斬撃っていうやつか?」
姿勢を戻した康生は、恐る恐る尋ねる。
「私が出来るのは風圧を起こすことだ。まだ斬撃を飛ばすことは出来ない」
風圧。聞くだけなら容易に想像することが出来そうだが、実際にやるとなったらそれは相当な事だ。
あの小さい面積の刃からあれほどの風圧を飛ばすには、一体いくらの力が必要なのか。
康生は改めて、目の前の翼の女の驚異を感じる。
「は、話を聞いてくれませんかね?」
それでもなお、康生は翼の女と会話をしようと言葉を投げかける。
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